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【原作・アニメ共通】
タイトルえん魔くんの誕生鬼太郎とえん魔くんどちらが原作?アニメOPと原作1話アニメ1夜と原作2話|人間界について|お金持ってるの?火炎のえん魔スカート?

人間界について

『えん魔くん』の世界における「人間界」とはどのようなものなのか?

●企画資料より●
DVD vol.1をお買い求めになった方は御存じのように、解説書の企画資料にこうある。
「2.その日本とは、地獄界では、その名を聞いただけでも失神する者が出ると言われる位の、
 辺境、悪徳の地なのである。」

そうなった謂れは企画資料の通りだが、「人間界=汚れた所、悪人罪人の行く所」というイメージは珍しくなく、古くは『竹取物語』からそう言われて来たのだ。
ここで何が解るかと言うと、「人間界(の中の日本)は大昔から変わっていない」と言う事だ。
何故ここで竹取物語が出て来るのかと思われる方もいるだろう。
この物語には、絵本ではカットされている重要なエピソードがあるのだ。

実はかぐや姫は月の世界で罪を犯し、罰として下界(人間界)に送られていた、紛れもない「罪人」なのである。
こんな古の時代から、既に人間界は悪人罪人の送られる流刑地として描写されているのだ。
そして月へ帰る日、迎えに来た従者が姫にこう言う台詞がある。「穢(けが)れた下界のものをお食べになって、さぞ御気分が優れない事でしょう」と、月の食べ物(不老不死の薬)を差し出すのだ。
これは「ずっと豚箱の臭い飯食ってて気分が悪いでしょう。口直しにこれどうぞ」と言う意味だ。月の下の世界は月の住人にとってそれ程までに穢らわしい、罪人に相応しい場所だと、読み手の人間に対し皮肉っているのである。

●時代背景●
旧『kaosのページ(※2010年10月閉鎖)』第三章「テーマ制から見た作品観」より転載
−−−−−ここから
昭和40年代の社会問題として光化学スモッグや地方の過疎化、使い捨て文明の見直し等が上げられ、本作のストーリーの中にもこのテーマが見受けられる。
雨女郎やクサリガマ、孫の手等の妖怪達は、人間達の作り出した汚染物質により強力化し、えん魔くんを襲う事になる。妖マリや地獄おくりなども使い捨て文明への反発を人間にぶつけ、主人公達を襲う。ヤマモリと雪入道は義理を欠いた人間(村人)への復讐である。
どの場合も弱い人間にこのまましてやられてなるものかと言う形をとっている。
−−−−−ここまで
昭和40年代の日本はアメリカに追いつけ追い越せという高度経済成長期である。
「新・三種の神器」と呼ばれた”3C(さんシー=Car[車]、Cooler[クーラー]、Color television[カラーテレビ])”の登場と、自動販売機が増え始め、まさに繁栄の時代であった。しかしその繁栄の歪みとして上記にあげられた社会問題も同時進行していくのである。
また両親が共働きや、母子・父子家庭などで留守がちな家庭では、 いつも家の鍵を首に下げている子供、いわゆる「鍵っ子」がこの頃から多くなる。父子家庭のハルミちゃんは、この時代の鍵っ子代表なのではないだろうか。

●背景・演出・美術で見る人間界●
旧『kaosのページ』第四章「作品としての「えん魔くん」」より転載
−−−−−ここから
本作の背景・演出・美術は『デビルマン』ですでに確立された永井豪風・妖怪の世界が引き継がれている。
どんよりと薄曇りな空模様・主要な建物以外は殺伐としたコンクリートや影の多い生気の感じられない描き方で統一され、逆に主要な建物(洋海小学校・体育館倉庫・バーバラ病院)などは、おどろおどろしい空気を充満させ、蜘蛛の巣や古びた煉瓦、木の窓枠、崩れた穴からの光が描かれ、細やかな演出がなされている。

第3夜「くさった川の大妖怪」や、第8夜「妖怪耳ずき」等にも多々出てくる下水口やゴミ捨て場、身近にありながらあまり意識しない「暗」をワンカットで見せ、強調し、視聴者と『ドロロンえん魔くん』の世界の共通点をさりげなく演出されている。また、具体的に新宿駅や都内最寄りの駅名、駅周辺などが作中に描かれてもいる。

そこここに視聴者と同じ世界を見せているにもかかわらず『ドロロンえん魔くん』の世界は異世界・別次元である事を強調する地獄魔界の風景は、まさにえん魔くん達の故郷であり、異次元として描かれ、えん魔くん達が決して人間ではない、超越した存在であることを強調している。
−−−−−ここまで
『えん魔くん』はスカッとした青空よりどんより濁った空、透き通った川より異臭漂うどろどろの川、どこに妖怪が潜んでいてもおかしくない暗く陰気な建物、ひしめく車とけたたましいクラクション、もの悲し気なスクラップなどが似合う。
そんな実社会の”マイナス部分”をあえて前面に強く描き出した世界こそが、えん魔くんの活躍の舞台・妖怪のふきだまりとなった人間界・日本なのである。

「今は昔…」で始まる人間界の”闇”の物語は、今尚続く。


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