暗闇の中、男が後ろを気にして立っている。
視線の先に見える人物のシルエットは、厳しい眼差しで男を睨む雪子姫。
雪子姫 | 「おまえ……… 人間じゃないね!?」 |
男 | 「キッ」 |
四つん這いで逃げる男の前に別の人物のシルエット。
男「!!」
そこにいたのは炎魔。有無を言わさずステッキを向け、炎に包む。
「ギャーッ」
魔王城。眠るスラムキングの部屋からは獣のような唸り声が聞こえる。
少し離れた場所に鎖に繋がれた「人犬(ひといぬ)」飛鳥了と牧村美樹。
唸るキングの顔が一瞬人外のような姿になったのをカーテン越しに見てびくつく美樹。
鞭の傷が痛々しい了は背を向けているが、横たわりながらキングの唸り声を聞いている。
魚をくわえた裸の女性が海から顔を出す。生のまま頭からバリバリと魚を食う女性。
カパエル「ヨォ〜〜 魚とりか?」
突然声をかけられ驚く女性。波打ち際の岩に座ったカパエル(人間)が女性を口説き始める。
「ケケ 可愛いねネーチャン ケケッ 魚とりやるならアクアラングかしてやるよ ホラ これ使えばいくらでも潜ってられるぜ」
背中のボンベを外して勧める。
「なんならゴーグルもかしてやるよ ケケッ オレあんたみたいなタイプ好きでよ 親切にしたくなるんだ」
女性が近付いて行く。
「ホレ…… こいつを口にくわえるんだ」
呼吸マスクを差し出し、女性が手を伸ばした瞬間、マスクからガスが噴出。
女性 | 「ウ グエ〜ッ」 |
カパエル | 「ケケケ 苦しいか 実は毒ガスでね」 |
女性 | 「ガッ」 |
女性は人外の正体を現し海に倒れる。
カパエル「ケケケ ケケ」
裸で眠るスラムクイーン。クイーンは太古の森のような世界で人ではないモノ達が争う夢を見る。
動物ではない、悪魔のような姿の”何か”が迫り来る夢を。
「アアーッ!!」
炎魔達が何故かキングの騎馬武者を追い詰めている。
騎馬武者は馬ごと化け物の姿へ変わり、炎魔が火炎弾を放つ。
騎馬武者 | 「ギャアア」 |
雪子姫 | 「フフフ」 |
カパエル | 「ケケケッ」 |
更にカパエル(人間)が銛を打ち込む。
「ケケッ どうだ 毒針の味は…」
ジャックのカパエルは無能なマスコットじゃございません!
続いて雪子姫が凍らせ、粉々に砕かれる。
雪子姫 | 「ホホホ ここはおまえ達が出てくる場じゃないのさ」 |
女ジャック | 「それはおまえ達にも言えるんじゃない?」 |
周囲の岩壁の上に立って彼等を見下ろす女ジャック。
女ジャック | 「同類だろ おまえらも………」 |
カパエル | 「ケケッ」 |
雪子姫 | 「だったら…?」 |
少年ジャック | 「消えた方がいいじゃん あんたらもさ……」 |
雪子姫 | 「!」 |
同じくふいに現れた少年ジャック。
少年ジャック | 「同類を殺して自分らだけ関東に残ろうなんて 少しばかり虫がよすぎないか……?」 |
雪子姫 | 「だったら…………」 |
女ジャック | 「去れば……よし! さもなくば消す!」 |
少年ジャック | 「あんたらが………… 仲間を消したようにね……」 |
カパエル | 「ケケケ できるかな……」 |
シャポー | 「わし…ら 三人に挑むのか……? たった一人で!?」 |
おお、やっと喋ったシャポー。ここまでただの帽子です。でも…台詞はこれだけorz
大男ジャック「一人だが三人だよ!」
この辺の台詞は『バイオレンスジャック』を知ってる人でないと意味不明かな。
いつ来たのか炎魔の背後に三人目の大男ジャックが立ち、睨みつけていた。
炎魔 | 「あ…‥あんたか できることならやり合いたくなかったが…… 関東に生きるためには おまえを避けては通れぬということか!?」 |
シャポーが縦に割れ、鳥の頭に変化。
マントは翼に、炎魔の頭は怪鳥の胸に埋まる形でシャポーと炎魔が一体化!何と言うフュージョン…
カパエルは本来の河童の姿に戻り、女ジャックに突進する。
雪子姫の相手は少年ジャック。
雪子姫 | 「坊や…… また凍らせてもらいたいわけ……?」 |
少年ジャック | 「へへへ 今度はおいら手の内知ってる うまくいくかな?」 |
雪子姫 | 「あいにく………… 失敗したことないのよね!!」 |
雪子姫は蛇か龍のような体に変化。うわー。雪女の設定はどこに…?
怪鳥炎魔は空を飛び、大男ジャックと対戦。
胸の突起から光線?炎?を発し大男ジャックを撃つが、バリアのようなもので防がれる。
女ジャックは鞭でカパエルを迎え撃つ。
毒ガスを吐かれ咽(む)せて倒れた所を、両腕に針攻撃を受けてしまう。
「ぎゃああぁ〜っ」
う〜ん、女ジャックが悲鳴を上げるなんて「ワシは病気じゃ」としょげるキングと同じくらい珍しい。
女ジャックの首を押さえ付け長い舌を伸ばすカパエル。
少年ジャックは雪子姫の蛇のような体に巻き付かれ動きを封じられる。
元の姿に戻った(逆か?)雪子姫(裸)に後ろから羽交い締めされる格好で転がる少年ジャック。
雪子姫 | 「フフフ 坊や このまま凍るかい それともおねえさんといいことするかい?」 |
少年ジャック | 「へっ 俺 ガキだからそんなの興味ねーや」 |
雪子姫 | 「ホホホ ウソ言って あたしのハダカのぞいてたじゃないー」 |
少年ジャック | 「ウヘヘ」 |
思い切り股間を掴まれる少年ジャック。
「あ〜っ!!」
この状況、男性には羨ましい……のか?
スラムクイーンは夢見が悪かったせいか全身汗びっしょりで起きている。
怪鳥炎魔の攻撃をことごとく撥ね除ける大男ジャック。立ってるだけで何もしてなくてもこの余裕!
シレーヌのような猛禽類の足でジャックを空中に掴み上げる怪鳥炎魔。
カパエルは舌で女ジャックの下履き(唯一の衣服)を焼き、エロモードに突入。
大男ジャックを持って上昇する怪鳥炎魔は
「グガガガ…‥ ジャック 関東に生き残るのは俺だ おまえではない!」
雲より高度な位置からジャックを突き落とした。
落下して行くジャック。
怪鳥炎魔「はっはっはっ」
後を追うと、落下したはずのジャックが雲から飛び出しジャックナイフを振り上げる。
このナイフこそ「暴力を呼ぶジャックナイフ──”バイオレンス(暴力)ジャック”」の呼び名の由来となった、彼の武器である。ちなみにジャックには「男」の意味もある。
怪鳥炎魔「グワッ」
思わぬジャックの反撃に一旦距離を置く炎魔。姿も人間形態に戻る。
雲の上のはずなのに二人とも普通に立ってますよ。炎魔は分かるが…。流石ジャック!普通じゃないぜ!
胸から血を流している炎魔。雲間の一瞬でやられたらしい。
炎魔 | 「ククク さすがにやるぜ……だが 俺の本当の力はこんなものじゃない!きさまがどこまでついてこれるかな!? いくぞっ!!」 |
炎魔のステッキとジャックのナイフが刃を合わせる。
左手のみ怪鳥の爪で炎魔が攻撃しかけると、ジャックは飛び蹴りで防ぎ、炎魔は再び怪鳥へ変化。
ジャックがナイフを振り上げ叫ぶ。
「うお〜っ」
炎魔がまるで爆発するかのように激しく光り、地上に落雷をもたらす。
雪子姫と交戦していたはずの少年ジャックは…
何故か『ドロロン』の頃のような少女に若返った雪子姫を追い掛けていた。
雪子姫「ホホホホ…」
草原を裸で走り回る若い雪子姫と少年ジャック。
少年ジャックの姿が徐々に子犬のような姿になり、雪子姫に走り寄る。
雪子姫「ホホ フフフ」
少女の雪子姫は幻想。大股開きの雪子姫の股間を子犬の少年ジャックが興奮しながら舐める。
そしてカパエルは女ジャックを犯してお楽しみの最中、突然の悲鳴。
カパエル「ギャ〜ッ ゲゲゲ… ゲ〜ッ」
ベキッと音を立て、甲羅が割れる。
甲羅から毒ガスが漏れ出し、遂には女ジャックが甲羅を突き破る。
内蔵を持って血塗れの女ジャックは恐ろしい。
一方水辺で少年ジャックと雪子姫は…
「フフフ ホホホ 子供のくせに楽しませてくれるじゃない… ホホホ」
少年ジャックは赤ん坊のように雪子姫の胸に吸いついている。
「どれ… いい夢を見たままに凍るといい……フフフ ホホホ」
背後の気配に気付く。そこには血塗れで立つ女ジャック!
雪子姫の背にジャックナイフを突き立てると、雪子姫の髪が伸び先程とは別の蛇?形態に変化。
少年ジャックは雪子姫の変身と同時に凍り付き、ここでリタイア。
女ジャック「本当の頭はそっちか!?」
槍のような頭部が女ジャックの腹を貫いた。
空から火の鳥となった炎魔にしがみついたジャックが一緒に落下して来る。
火の鳥炎魔 | 「燃えろ!きさまとてオレが全能力を放った超高熱にたえられまい! オレも死ぬがきさまも死ぬ!これがオレの最後の超能力だ!!」 |
女ジャック | 「ウッ!?」 |
炎の鳥は女ジャック達のいる場所へ(狙ったのか偶然か)落ちて行く。
そして巨大な爆発──。
夜が白み始めた頃、落ち着いたのか静かに寝息を立てるスラムキング。
薄目を開けていた飛鳥了も眠りについた。
炎魔とジャックの戦いの大地には燃え尽きた怪鳥の骨。そして地面から二羽の光る鳥が飛び立つ。
何事もなかったかのように立つ大男ジャックの肩にとまり、もう一匹は空を飛ぶ。
大男ジャックは再び荒野を歩いて行く。
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バイオレンスジャック 第二十部 炎の魔人編/完 |