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小四第五話

さあ、よう怪たちとえん魔くんの ちえくらべが始まります。しかし…………!!
(1974年2月号『小学四年生』表紙コメントより)


「だとう えん魔!!」
左右非対称の大きさの角と腕を持つ鬼の妖怪が叫ぶ。
あまのじゃ鬼(き)
<のう力(りょく)>
相手と反対のことをやって喜ぶ。頭のできは悪い。

「ダトー えん魔 オオー」
それに呼応する、顔に手足が生えた妖怪。
でたよう
<のう力>
物かげから急にとび出し 人をおどろかす。頭はたいしたことない。

「打倒 えん魔くん」
素っ裸にチョッキを羽織り、両手に蛇とトカゲを持つ少年。
わるさ
<のう力>
人のいやがる虫やこん虫をだしてわるさする。頭 決してよくはない。


●なんか、強そうなよう怪があらわれてきましたよ。どうなるんでしょうかねえ。
(柱コメントより)


あまのじゃ鬼「同志しょ君、よく集まってくれた。
 きょうの議題はほかでもない、えん魔をたおす相談だ。
 あいつのため 多くのなかまがやられた。
 その原いんがどこにあるか、おれは三日三ばんねないで考えた。
 いつも、よう怪が一ぴきずつで戦ったのがいけない。
 今回は、三びきいっしょに力をあわせよう。必ず勝てる。」
他2匹「オーッ」
諸手をあげ賛成するでたようとわるさ。
頭のよわいやつにかぎって 人数が多ければ勝てると思う……。
なんてナレーション入ってますよお三方。

でたよう「まずは えん魔をおびきよせよう。」
ペチャクチャと喋りながら通りを歩いて来る少年と少女。これはツトムくんと…ハルミちゃん?
でたよう「きたきた。」
その2人を角で待ち構えるでたようとわるさ。
ツトムくん「きのうのテレビおもしろかったぜ。」
ハルミちゃん「へえ。」
ツトムくん「こーんな怪獣が出てきちゃってよう。」
口を左右に引っ張って真似してみせるツトムくん。石川ハルミちゃんが美人だー。

でたよう「バーッ でたよ〜」
ツトムくん「ぎゃっ」
いきなり飛び出てきたでたように吃驚するツトムくんたち。
ツトムくん「ハチャハチャ でたでた。」
大慌てで犬のように這いながら逃げるツトムくん。
その目の前にスーッと、トカゲをくわえた蛇が降りて来る。
わるさが蛇を持ち追い掛けて行く。
ツトムくん「フンギャー」
わるさ「キキー」
あまのじゃ鬼「オリャーッ!」
最後にあまのじゃ鬼が頭突きでツトムくんを突き飛ばす。
ドーンと遥か遠くまで飛ばされて行くツトムくん。大丈夫か?生きてるか?
でたよう「カハハハ 女を返してほしくばえん魔をつれてこい。」
ハルミちゃんが捕まって気絶している。
ツトムくんがえん魔くんと知り合いな事は既に知られてるんだねえ。

でろ〜んと地獄別荘。
「………というわけなんだよ。あーん。」
ツトムくんが泣きながら訴える。あれだけ強く突き飛ばされて頭にコブ一つとは頑丈だなー。
カパエルが昔懐かしの十字絆創膏を、コブにペタと貼ってあげる。
シャポー「少女を人じちにとってよびだすのは、それはわなじゃ。」
雪子姫「まちぶせかな?」
シャポー「どうする えん魔くん。」
えん魔くん「ム──ッ!
 人間がこまってる。相手が多ぜいだろうが…、
 わなだろうが…、行かにゃあなるまい!」

「ワー かっこいい」
格好良く決まったえん魔くんの台詞に、パチパチと拍手して感動する他3名。
「どうもどうも。うけたなあ。」
赤くなって照れるえん魔くん。ツトムくんの手をとって
えん魔くん「よし、レッツゴー」
雪子姫「どうぞかってに。」
えん魔くん「なぬ?」
意外な雪子姫の言葉に、ガタと顔面落下する2人。
雪子姫「これはえん魔くんにきたちょう戦でしょ。わたしたち関係ないもの。」
えん魔くん「そんな不人情な…。」
雪子姫「不人情だもんねー。」
カパエル「うんうん。」
えん魔くん「なんだい よう怪の二ひきや三びき、ひとりでじゅうぶんだ!」
シャポー「だいじょうぶかいのー。」
ちょっと不機嫌そうに出動するえん魔くん。

ツトムくんが上空から地上を指差す。
「あっあそこだ。かきねのところに一ぴきかくれてる。」
ハルミちゃんは突き立てた杭に縛り付けられ泣いている。
ハルミ「あ〜ん」
でたよう「プー。えん魔め、はやくこないかな。きたらば、おどろくだろうな。」
無邪気にえん魔くんを驚かしている自分を想像するでたよう。
その後ろにスーッと降りるえん魔くん。
でたよう「ショック死しないかな。」
まだ気付かないでたようの肩(頭?)を指でトントン叩くえん魔くん。ようやくでたようが振り向くと…
「ン?ぎゃあえんま ショック!」
のけぞって驚くでたよう。
でたよう「ずるいやずるいや。うらからくるなんて。
 ちょっとまってて。」
慌ててトコトコ垣根の向こう側に回り、
「もういいよう、きても。」
そして改めて飛び出し、
でたようバー でたよう」
えん魔くん「あほかこいつ?」
ツトムくん「さあ?」
あまりの間抜けさに呆れ顔のえん魔くん達。ステッキでポカと一発
でたよう「フギュー」
でおしまい。
続いて上から蛇やトカゲがニョキっと降りて来る。
ツトムくんはきゃ〜と悲鳴を上げるが、えん魔くんは落ち着いたもの。
わるさ「わるさだぞー。」
えん魔くん「こいつもあほか。」
わるさは木の枝に足を引っ掛け逆さにぶら下がっている。
シャポーは何と、わるさの持っていたトカゲをパク、モグモグと食べてしまう。
「うん?これはいける。」
えん魔くんはわるさにビーンとビンタ一発
えん魔くん「よう怪らしくせい!」
わるさ「ア〜ン しかられたー。」
と、わるさは泣きながら去ってしまった。
えん魔くん「なんか悪いことしてるみたいだな。」
敵が弱すぎると虐めてるような罪悪感感じそうだよね(苦笑)
ハルミちゃんに駆け寄るツトムくん。
ハルミ「あっ、つとむくん。あぶない!!」
えん魔&ツトム「えっ、なにが!?」
直後、地面からあまのじゃ鬼がドバーンと飛び出す。
えん魔くん「わっ!」
あまのじゃ鬼「ワハハハ わなにかかったなえん魔!
 二ひきやっつけて気をぬいたな。ひねりつぶしてやる!」
えん魔くん「うう。」
あまのじゃ鬼は右腕一本でえん魔くんの体を鷲掴み。
ギュ──ッと、手に力が込められる。苦しむえん魔くん。
えん魔くん「うっ」
あまのじゃ鬼「フフフフわしの右手は鉄でもつぶすんだ。
 死ね えん魔
えん魔くん「ううっ」
雪子姫「まて」
あまのじゃ鬼の右腕が、血飛沫を飛ばしドバッと切り落とされる。
永井えん魔くんでもなかった過激表現ですよ、うひょ〜。

腕を切った2本の氷の柱がドスッと地面に突き刺さる。
えん魔くん「このつららは?」
雪子姫「真打ち登場!!」
ジャーンと効果音付きで主人公並です。ついでにカパエルも一緒。
えん魔くん「雪ちゃん、やっぱりぼくが心配できてくれたねー。」
雪子姫「わながあるといけないと思って えん魔くんをおとりにしたのよ。」
えん魔くん「さーすが雪ちゃん頭いい──。 おれおとりかアハハハ。 にくいにくい。」
雪子姫「きゃーっ」
妖怪をよそに2人でじゃれてます。雪子姫をつねっ。きゃーと言いつつ顔笑ってます、姫。

あまのじゃ鬼「うう。」
えん魔くん「にくい ほんとににくい。」
雪子姫「きゃ」
あまのじゃ鬼「えん魔をやっつけるまで負けないぞ!!」
腕を落とされ無視されながらも真面目にえん魔くんを襲うあまのじゃ鬼。
あまのじゃ鬼「ガ──ッ」
雪子姫「きゃ〜」
しかし…
あまのじゃ鬼の体がグラ、カク
「あ。あ。あ。バランスがとれないわ」
左右非対称の体を持つあまのじゃ鬼。
片方の腕が落とされた為に体のバランスが取れず、ぐらついて後ろに下がって行く。
多分頭の大角が原因だな。
トントン下がって川にドボ〜
えん魔くん「あ、落ちた。」
カパエル「はいおちまい!」


●今月は、えん魔くんより、もっとだらしないよう怪たちでしたね。えん魔くん、たすかったですねえ。
(柱コメントより)

柱に「えん魔くんより、もっとだらしない」と突っ込まれてるよ;

小学四年生1974年2月号/完

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