HOME総合リスト大辞典研究室宝物庫リンク掲示板

学年誌トップ

小四第四話

妖怪百もんめの巻

本編

「ワーッ。」
町中を、カパエルが慌てて走って来る。
「たいへんだ。
 百もんめが 出た!!

洋海小正門をドド、と勢い良く曲がるカパエル。
ナレーション「またしても、洋海学園のものおき」
「えん魔くん たいへんじゃあい。」

物置きの跳び箱の一番上の段をパカと持ち上げ、落ちるように急降下。
そこには不思議な空間に、シャポーに似た姿の屋敷が池の中にぽつんと建っている。
ナレーション「洋海学園のものおきの地下に えん魔くんが、えん魔大王にたのんで作ってもらった えん魔くんの家なのです。」
「えん魔くーん。たいへんだってばあ。」
「うるせーな朝っぱらから。どうしたカパエル。」
えん魔くんが丸窓から眠そうに顔を出す。お、上半身裸。
カパエル「百もんめが出よりまして、人間にとりついてますねん。
 出動しておくんなはれや。」
えん魔くん「えっ。」
シャポー「なにっ!百もんめじゃ。」
えん魔くん「シャポーじい、なんだ、百もんめって。」
シャポー「おそろしい妖怪じゃ。地獄界の住人も、あの百もんめには手をやいておったんじゃ。
 えん魔くん、これは強敵じゃぞ。全員出動じゃ。」
えん魔くん「よし、おれ雪ちゃん呼んでくる。」
シャポーマジです。…えん魔くん、裸裸!

雪子姫のお部屋。姫はベッドの上に身を起こした所。こちらも裸です。ひゅ〜ひゅ〜。
えん魔くん「雪ちゃん 出動だぞ。」
雪子姫「だめよ。今、着がえようとしてるのに。」
えん魔くん「雪ちゃんのへやは いつみてもきれいですね へへへへ……。
 氷のかべに つららのシャンデリヤ。雪のふとん へへへ……。」
雪子姫「もう、むこうへいってよ。着がえられないじゃないの。」
えん魔くん「いくらかくしてもだめだい。雪にすきまができちゃって……。」
雪子姫「あっ。」
胸を隠していた手を、思わず下におろしてしまう。
えん魔くん「あんれ……、かわゆいおっぱい。」
雪子姫「なによ、えん魔くんだって、ちっこいキンタマまるみえよ。」
えん魔くん「なにっ」
いやもう何と言うか…台詞だけでも凄い会話だ( ̄▽ ̄;)。
えん魔くん「しまった。あまり急いできたので、はじかしい。」
雪子姫「いいかげんに出ていかないと こうしてやるわ。」
恥ずかしがって(何を今更;)床にうずくまるえん魔くんを、軽く蹴飛ばす雪子姫。
カパエル「あーあ あいつらやる気があんのかな。」
シャポー「まったくジャ」
ごもっとも。

ようやく出動。空から現場に向かうパトロール隊。
えん魔くん「どこだ、百もんめは……。」
カパエル「こっち。」
地上に着陸。
えん魔くん「いねえじゃねえか。」
カパエル「おかしいなあ。」
えん魔くん「カパエルのじょう報もあてにならなくなったな。」
カパエル「なぬ。
 なにをいうか このカパエルさまの、じょう報集めは、
 えん魔の国いちばんといわれてるのに。ほかのことはだめだけど。
 わたしの心は深く深くきずついたのだ。」
えん魔くん「ごめんごめん。」
カパエルの肩をポンポンと叩き謝るえん魔くん。その直後、雪子姫が悲鳴をあげる。
雪子姫「きゃあ。」
えん魔くん「どうした雪ちゃん。」
雪子姫「あれ。」
えん魔くん「あっ。」
雪子姫が差した方向には、上半身や顔がが火のついた蝋燭(ろうそく)状態になった人間が歩いている。
百もんめに取り付かれた者達だ。

人間「………。」
シャポー「あれが百もんめじゃ。」
えん魔くん「ふーん こいつがそうなのか。」
カパエル「どうじゃ。わいのじょう報正しかったろう。」
エヘンと胸を張るカパエル。
えん魔くん「下のほうは人間だろ。首をとられてるのに どうして歩けるんだ。」
シャポー「百もんめにとりつかれると、からだがなくなるまで気がつかんのじゃ。
 あのまま自分ではまだ生きてると思ってるんじゃよ。
 とちゅうでにげだすことも考えられんのじゃ。」
カパエル「ね、ね、わいのじょう報正しかったよね。
 わいのじょう報は日本一じゃ。カカ」

カパエルの後ろを歩く人間の下半身から蝋燭がピョンと跳ねる。
百もんめがいなくなった人間の下半身はそのまま地面にバタンと倒れた。
えん魔くん「カパエルあぶない。」
カパエル「なに。まだ、わいの情ほうにけちをつける気か。」
勘違いするカパエルの頭の皿に百もんめがピュッと乗っかり、熱さで走り回るカパエル。
カパエルフギャャ あじじじ。あわ。あわ。」
えん魔くん「動くなカパエル。いっしょにたたいてやる。」
ステッキでカパエルの頭をバキッと一発。しかし百もんめは逃げ、カパエルだけ殴る形に。
カパエル「このー。」

人間にそれぞれとりついていた百もんめ達が、ひとつに合体、特大蝋燭化する。
千もんめ「合体!! 大妖怪千もんめ。いくぞえん魔!」
えん魔くん「む。 火えんぼう。」
千もんめ「火えん返し!」
えん魔くん「わっ。」
何と、えん魔くんの火炎放射を逆にえん魔くん自身に返して来た。
マントで防ぐ間もなく返り討ちにあう。
えん魔くん「あじいー!」
千もんめ「ばかめ、ろうそくのわしに火がきくか。
 残るはきさまだけだ、雪子ひめ。」
のしかかって来る千もんめをかわしながら、攻撃する雪子姫。
雪子姫「つらら落とし。」
千もんめ「むだなあがきはやめろ。」
蝋燭の体の千もんめにつららの攻撃は効かない。
口から鑞を吐き、雪子姫の右足首に命中。
雪子姫「あっ。」
千もんめ「ヒヒヒヒ。」
雪子姫「あああ。」
千もんめ「かみの毛一本残さずとかしてやる。」
体を地面に固定され、身動き出来なくなる雪子姫、ピンチ!
千もんめ 「むっ。」
雪子姫はさっと左腕の人さし指を立て高くかかげると、両目がカーッと光り出す。
千もんめ「ああ。からだが……。わあ、からだがこおる。」
雪子姫「見たか、雪子ひめのからだにふれたものは すべてこうなるのよ。」
姫の妖術で体が凍り付く千もんめ。
雪子姫「えん魔くん はやく。」
えん魔くん「あいよ。マントよ、ハンマーになれ。」
焦げ焦げになったえん魔くんがマントを特大ハンマーに変化。千もんめを打ち砕く。
えん魔くん「このやろう。」
ガシャーン
えん魔くん「ワハハハ 妖怪め、このえん魔くんにかかっては 手も足も出まい。
 さあ、しめ。妖怪はこの王子さまがたいじいたしました。お手をどうぞ。」
雪子姫「かっこつけるな。やられたくせに。」
頭をコツン。今回はいい所がなかったねえん魔くん。
雪子姫「さあカパエルを運んで。」
シャポー「えん魔くん ここんとこ雪子姫にやられっぱなしじゃな。」
えん魔くん「うーん、こんどこそは。」
頑張れ。

小学四年生1974年1月号/完

12月号 2月号

学年誌トップ

HOME総合リスト大辞典研究室宝物庫リンク掲示板