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小四第二話

◆「いくぞー、よう怪ども。えん魔くんがいるからは、あばれさせないぞー。」フヒヒ、カーッコイイ。
(1973年11月号『小学四年生』表紙コメントより)


工場の煙が大気を汚している。黒い雲が空に立ち上っていた。
パトロール隊は橋の上に並んで座り、汚れた川を見下ろしている。

えん魔くん「きったねえ川だな。」
カパエル「すっごくよごれてますねえ。」
雪子姫「人間て どうしてよごすんだろうね。」
川には空き缶や黒い浮遊物が沢山浮かんでいる。

カパエル「むかしはこの川に ぼくのごせんぞさまが すんでたんですよ。」
えん魔くん「今じゃ おもかげも残ってないな。」
シャポー「うん。」
カパエル「こういうところをこのんで よう怪が地上にでてきちゃうんですよね。」
アニメと似た展開が続く。カパエルがやけに丁寧な言葉を使うなあ。

えん魔くん、立ち上がり
えん魔くん「よしっ!! おいらが魔力できれいにしてやる。」
雪子姫「だめよ えん魔くん。」
即座に止められ、ガクガクッと前のめりにバランスを崩すえん魔くん。
しかしえん魔くんに川を綺麗にする魔力なんてあるんだねえ。(軽く突っ込み)

えん魔くん「なんだよ。いきなり」
雪子姫「えん魔大王さまからいわれているでしょう。
 魔力はよう怪をやっつけるときだけ。人間界のようすをかえるときに使ってはだめよ。」
えん魔くん「うんっ、わかってるよ。 たいくつだからいってみただけだよ。」
シャポー「あはは。 えん魔くんも雪子姫にかかると かたなしじゃのう。」
えん魔くん「だまれシャポーじい!あた
ステッキでシャポーを叩こうとして、避けられ自分の頭をパカッと殴ってしまうえん魔くん。
えん魔くん「きいー。」
雪子姫「だいじょうぶ、えん魔くん。」
余程強く殴ったのか、えん魔くんは橋の手すりの上でのびてしまう。かなり情けない。

その様子を、橋の下、川の中から見ていた者がいる。
(………。
 あいつらが魔界から われわれをたいじしにきた えん魔とやらのなかまだな。フフフ……。)
水の中に目が映る。
(どれ 一つ遊んでやるか。…………。)

所変わって、銭湯用具を小脇に抱えたトバッチリが、カランコロンと下駄を鳴らしながら鼻歌を歌いつつ川の側を歩いて来る。そこへ、プ〜ンと嫌な音をたてて一匹の蚊が飛んで来た。
トバッチリ「いやですねもう。秋だというのにカが多くて。」
ピシャ、と左腕を叩く。
「おはだの曲がり角をさされましたよ。」
どうやら背中も蚊に刺されたらしい。背中をポリポリ掻いていると、後ろから
「かきましょうか。」
と声がかかる。
トバッチリ「どなたかしりませんが お願いします。」
後ろも振り向かずにそう頼むと、Yの字の棒のような物がトバッチリの背をポリポリ掻き始める。
トバッチリ「あっ! とっても…、 ああ…。」
余程気持ちが良いのか、段々とよだれや小便まで漏らしながら恍惚とするトバッチリ。
背を掻いている棒は地面から二本伸びており、ポリポリと背を掻き続ける。
トバッチリ「とろけそう。」

地面からスキンヘッドの老人が現れ、
まごの手「とろけるよ。もうすぐ。
 とろけて……たましいだけ わたしにおくれえ。 この、まごの手さまに……。」
トバッチリ「あげる。すべてあげる。 う。」
振り向いたトバッチリは、目の前にいる老人を見て悲鳴をあげる。
まごの手の見た目は人間とさほど変わらないのに、何故驚く。
通りすがりの親切な爺さんくらいに思わんか?
トバッチリぎゃあああ
雪子&カパ「むむっ。」
雪子姫「事件だ、いくぞ。」
悲鳴を聞いて駆け出す雪子姫たち。姫、男言葉使ってませんか?(^^;
一方えん魔くんはまだ気絶中。
シャポー「えん魔くん、しっかりしなはれ。」
って何で関西弁か。
シャポー「しょうがありまへんね。大事なときに。」
何と、いつものようにえん魔くんの頭に乗ってパタパタ飛んで運ぶシャポー。
タケコプターかい。シャポー実は力持ち!?凄いぞ石川小四。

まごの手「ちえっ。あとすこしでたましいが食えたのに。 悪のりしおって。
 むっ。 だれかくる。」
トバッチリは地面にひっくり返ってピクピクのびている。そんなにショックだったか?まごの手の顔。
まごの手「ひとまずかくれよう。」
スーッと、トバッチリの影に潜むまごの手。

雪子姫「あれだ。」
塀からひらりと着地し、倒れているトバッチリを発見。
カパエル「このきずをみてください。 きれいにひっかかれてる。人間わざじゃないですよ。」
雪子姫「そんなことのできるよう怪といったら……。 まごの手。」
トバッチリの影からまごの手の手がスーッと伸びる。
カパエル「う。でたっ!!
まごの手「ヒヒヒヒ……。」
背中を掻かれたが、甲羅なので大丈夫なようだ。
今度は雪子姫に腕を伸ばすまごの手。
雪子姫「あ。」
すかさず口から雪ビームを吐くと、まごの手の手が凍る。
まごの手「雪ビームにやられた。」
左腕をカチカチに凍らされ、トバッチリの影に逃げ込み退散しようとする。
雪子姫「あ、にげる気か。」
トバッチリ「あ。わしの影が……。」
シャポー「えん魔くん出番じゃ。にがすと はじじゃぞ。」

ブルブルと顔を振ってようやっと目が覚めたえん魔くん。
「くそっ。にがしてたまるか。」
ステッキを投げ、地面に向かって逃げた影を刺す。
まごの手ぎゃあ ううっ。やりおったな えん魔め。」
まごの手の腹にステッキが刺さっている。
えん魔くん「もうにげられねえ。かんねんしろ、まごの手!」
まごの手「兄い、たすけてくれ。」
くさりがま「オオーッ」
まごの手が呼ぶと、川の中から、巨大な蝦蟇(がま)が姿を現した。
えん魔くん「あっ」
くさりがま「くさりがまだあ。」
名乗るなり、左手人差し指の分銅つき鎖をピューツと振り投げる。
えん魔くんと雪子姫はジャンプしてかわすが、カパエルとトバッチリは避け損ねて仲良くぶち当たる。

今度は右手の大鎌を振り、襲って来るくさりがま。
えん魔くん「やるぞこいつ。気をつけろ雪子姫。」
雪子姫「おっと。」
うまくかわしたつもりが、着物が裂け、胸もあらわに嬉し恥ずかしいお姿に。
雪子姫「あ。 あれえ。」

裸んぼうの姿でポトッとくさりがまの手の上に落ちる雪子姫。(何故?)
雪子姫「きゃっ。」
くさりがま「ヒヒヒ。めんこいむすめじゃの。」
雪子姫「きゃああ」
くさりがま「わしのよめになれ。」
雪子姫「ああ。」
ショックのあまり雪子姫は気絶。よもやくさりがまに求婚されるとは。もてる女も辛いね(笑)
「めんこい」って、くさりがまは東北地方に棲んでいた事があるのか?

くさりがま「あれ 気をうしなった。? どうしてかな。
 まあいいや チューしたれ。」
まごの手「兄い、次はわいやで。」
まごの手は関西地方に棲んどったんか?腹にステッキ刺さったままで余裕な態度やね。
ハートマーク飛ばして雪子姫の唇を奪おうと顔を近付けるくさりがま。雪子姫大ピーンチ!!

えん魔くん「ばかたれ、おれの雪子姫に手をだすな。」
トバッチリ「あれっ」
えん魔くん、怒ってトバッチリをぶん投げる。よしよし。嫉妬してるな。
トバッチリは雪子姫の代わりにくさりがまとブチューVv
くさりがま「………。」
トバッチリ「…………。」
二人ともタラリと脂汗をかいた後、お約束の「オエ〜ッ」。(笑)

えん魔くん「このやろう。 もう、おこったぞ、おれの雪ちゃんをいじめやがって。」
そうそう。そうでなきゃ。くさりがまとまごの手にジャンプキック!
えん魔くん「恋のうらみと食い物のうらみはおそろしいんだ。」
まごの手の腹に刺さったステッキを持って、そのままバンバンと地面に叩きつける。これは痛そう。
えん魔くん「火えんぼう。」
がま&まご「ぎゃああぁ…」
最後は必殺技でまとめて派手に焼却退治完了。

そして、雪子姫からお礼のほっぺにチューを受けるえん魔くん。
雪子姫「ありがとうえん魔くん(チューV)」
えん魔くん「ブヘヘ。」
シャポー「よかったですねえ。」
その後ろではトバッチリが、まだ一人で「オエー」となっていた。いとあわれ。


●あー、みーちゃった、みーちゃった。えん魔くんたらデレデレして。よう怪たいじもわすれるなよ。
(柱コメントより)

小学四年生1973年11月号/完

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