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※壁紙色、本文の文字色などは雑誌連載時と同じ雰囲気にしてあります。
◆ジャジャジャーンと、ついに新登場!もうれつで、強くてゆかいなえん魔くんだ。読むのだぞ。
(1973年10月号『小学四年生』表紙コメントより)


●人間をいじめるよう怪たいじに、地ごくからやってきたえん魔くん。全力をあげて戦うのですぞ。
(柱コメントより)


洋海学園
ピカッ ガラガラ と雷鳴轟く雲の下、学園の前に複数のシルエットが立っている。
ピューと吹く風。
とんがり帽子の少年が、破れたシルクハットを被る貧乏臭い男に確認する。
えん魔くん「この学園か、ダラキュラ。」
ダラキュラ「ヒック ヘエー。
 ヒック。たしかにこの学園でさ、まちがいありません ヒック。」
ダラキュラと呼ばれた男は酔っぱらっているらしく何度も吃逆(しゃっくり)をしながらそう答えた。
ババーン
雷が学園の避雷針に落ち、轟音を立てる。
少年の帽子が喋り出す。この帽子には目玉と口までついていた。
シャポー「おいえん魔。なにか感じるか、ケケケ。」
えん魔くん「ああ 感じるぜ、頭の上のシャポーよ。
 ぞくぞく感じてくるぜ。なあ雪子ひめ。」
雪子姫「じゃあ やはりこの学園の中にいるのね。」
雪子ひめと呼ばれた黒い長髪の少女は、裾丈の極端に短い着物を身に着けている。
少女の手前には、何故かカッパ。
えん魔くん「地ごくをおわれた はんぱよう怪どもめ。この学園の中でうごめいている。
 一ぴき残らず たいじしてやるぜ。それがおいらの使命さ フフフ。」
そう言って、自信ありげにニヒルに笑う。

ダラキュラ「では、あっしが一ばんのりで。ヒック。ウイ。」
校門の柵に足を掛け、乗り越えようとしたダラキュラを、後ろから蹴飛ばすえん魔くん。
えん魔くん「ばかたれ。ダラキュラ、てめえのでるまくじゃねえ!!
 そもそもてめえが地上のよう怪たいじの命令をきかないで、酒ばかりくらってるから
 こうなったんだぞ。」
雪子姫「そうよ、えん魔大王さまはおいかりよ。」
ダラキュラ「だって相手がみんな強すぎるんだもん。ヒック。ヒック。」
情けない事を言うダラキュラに、えん魔くんは高らかに宣言する。
えん魔くん「とにかく これから地上のよう怪たいじは、おれがやるぜ!
 てはじめは この学園のよう怪からだあ!」
シャポー「レッツゴーえん魔!」
雪子姫&カパエル「オー」

場所は変わって学園のとある教室。そこには先生らしき眼鏡の中年男性と、一人の少年が机に向かっていた。
トバッチリ「ツトムくん まだ終わりませんか?」
ツトムくん「ハヒ、ハヒ。トバッチリ先生、もう九時です。帰らせてください。」
トバッチリ「だめです、宿題をわすれたのはきみだけ。 終わるまで帰しません。」
どうやら居残りをしているらしい。
何とツトムくんは腕時計をしている。当時の小学生で腕時計とは、随分裕福な家庭なんだな。

ツトムくん「あんまりおそくなると おかあさんにおこられるよ。帰らせて。」
トバッチリ「おかあさまには わたしから連らくしときます。だめ。」
ツトムくん「おそくなると帰り道がまっ暗なんです。オバケがでるという うわさがあるんです……。」
トバッチリ「オバケ?ツトムくん、きみはなん年生になったんですか。」
ツトムくん「四年生です。」
え!?アニメでは三年生だったけど…小四の連載では四年生なのかぁ。

トバッチリ「四年生にもなって オバケなどという非科学的なものがいると 信じているのですか?
 う──ん。
 だから宿題をわすれるんです。」
ツトムくん「すみません。」
トバッチリ「オバケのことも おかあさまにいいつけときますよ。」
出席簿を抱えた先生が教室を出ようと扉に手を掛け、ガラッと音を立てて開くと、大量の蛇の入った巨大な人面の壷が居座っている。
トバッチリ「だいたいオバケなどこの世の中に……、
 いるわけ…………、……………………、」
言葉を失い、眼鏡を外してゴシゴシ拭く。もう一度ジ〜ッとよく見て
「ある」
ツトムくん「トバッチリ先生!」
驚くツトムくんの足下からも2本の腕と一本の足が突き出し、腕はツトムくんの両足を、股間に足をかける。
ツトムくん「あひ」

えん魔くん「ム でたなよう怪!あっちだ」
カパエル「ヒオーッ」
異変に気付いたえん魔くん、雪子姫、カパエル達は一斉に廊下を駆けて行く。

トバッチリ「ツトムくん、よう怪はいます。」
蛇の壷の中に入れられたトバッチリ先生、泣き叫びながらも冷静です。
トバッチリ「わたしは信じますよ。ギアア
ツトムくん「今さら信じてもおそいや! アハハハ タマがつぶれる」
一方のツトムくんは人間型の妖怪に股間をグイグイ押さえつけられる通称「電気按摩」をかけられている。
電気アンマ「この学園はおれたちよう怪がもらうぜ、ヒヒヒヒッ。」
ヘビつぼ「人間はいつ食ってもうめえんだ。グヒヒヒ。」
ガシャーン
えん魔くん「まて、電気アンマにヘビつぼ!!」
窓を割って颯爽えん魔くん登場!バキ、と電気アンマに飛び蹴りをお見舞い。
えん魔くん「はんぱよう怪め、悪さは、このえん魔くんがゆるさないぞ!」
ヘビつぼ「えん魔だと?」
ギク、となるヘビつぼ。
えん魔くん「地ごくをおいだされたよう怪ども、地上の人間をおびやかすなんざあ、ゆるせねえ。」
電気アンマ「地ごくからのおってか、ヒヒ。
 しゃらくせえ かえりうちだ!」
ぐわーと電気アンマが伸ばした両手を飛び上がって軽くかわし、ステッキでアンマの顔面を殴るえん魔くん。
えん魔くん「地ごく一(いち)のあばれんぼう えん魔くんをあまくみるな。」
カパエル「えん魔くんの一(いち)のけらい、カパエルだ。」
雪子姫「雪子姫!」
カッパのカパエルと雪子姫も参戦。
雪子姫「雪ビーム!」
指をさすとピューッと雪のビームを出し、トバッチリ先生もろとも(笑)ヘビつぼに攻撃を見舞う。
ヘビつぼ「ムッ。ばかめ、それくらいで おれをやったつもりか。」
ヘビつぼは口からカーッと無数の蛇を吐き出す。
雪子姫「きゃあ!」
カパエルと一緒に体中ヘビに絡まれ、身動きできなくなる雪子姫。
カパエル何もやってないのに役立たず〜;お約束です。でも「一のけらい」なのね。
ヘビつぼ「ダラキュラ、てめえもやるか。」
ダラキュラ「いえ、わたしはただ……、
 あのなまいきなえん魔のやろうの最期をみとどけようと、ハイ。
 いいぞ電気アンマ。えん魔のけらいはやっつけたぞ。」
えん魔くん「なに?」
一升瓶かかえて調子のいい事を言うダラキュラ。これもお約束(笑)

電気アンマ「ヒヒヒ」
えん魔くん 「あ」
えん魔くんは電気アンマに後ろから両腕をガチッと掴まれる。
電気アンマ「今だ ヘビつぼやれえ!」
えん魔くん「あう」
ダラキュラ「いいぞ いいぞ」
囃し立てるダラキュラ。
教室の中では蛇に簀巻きにされているトバッチリ先生も横たわって気絶している。

ヘビつぼから無数の蛇が這い出て来る。
えん魔くん「ああっ!」
シャポー「ヒオ!」
えん魔くん「えん魔くんの力をなめるなよ。 オオ
だあ、と電気アンマをを投げ飛ばすえん魔くん。背負い投げに近い?
電気アンマ「ああ」
えん魔くん「火ん!
ステッキから凄まじい炎が放たれ、2匹の妖怪どもを一気に焼き尽くす。

ダラキュラ「あちち」
マントに飛び火をくらって熱がるダラキュラ。更に
ダラキュラ「えん魔くん強い! アハハハ」
と言いながらポンポンと馴れ馴れしくえん魔くんの肩を叩く。
ダラキュラ「たしかに強い、アハハハ。」
そんな調子のいいダラキュラをジ〜と睨む雪子姫とカパエル。
ダラキュラ「わーん。ゆるしてえ。」
怒った2人から逃げるダラキュラ。床にはツトムくんとトバッチリ先生が仲良く倒れている。

えん魔くん「あんなのと よう怪たいじをしなくちゃならないんだから やんなっちゃうよ。
 11月号はもっとすごいから見てね。」


◆えん魔くんの強さ、すごいだろう。これからの活やくが楽しみなのだよ。(柱コメントより)

小学四年生1973年10月号/完

11月号

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