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翠湖トップ

屋内プールの飛び込み台から綺麗に着水する女子スイマー。
直後水中で複数の不気味な化物に襲われ、溺死してしまう。
夜中のプールでたった一人の練習中、あっという間の出来事だった。

○○県警察署。刑事達が事件の報告で集まっている。
刑事1「以上のことをもちまして現時点では犯罪の可能性を感じさせる要素は見当たらないと思えます
 ただ 目撃者もいないことなので事故と断定するには 時期尚早かと……
 遺族の気持ちを考慮し調査を打ち切らず縮小し 事件・事故の両面から調査ということに……」
解散し、廊下で歩きながら担当者の話になる。
刑事1「まぁ──そういうことでいいんじゃないか
 後で 何か出てきたらマスコミに叩かれる」
刑事2「まったくです 警察は忙しいのに すぐに怠慢と言われますから」
刑事1「しかし 誰かいるかねヒマな奴は……?」
刑事2「東京から派遣されて来た(冊子では「転勤になって来た」)若い刑事が一人
 こちらの土地に慣らすのにいいでしょう
 イナカの高校生の(冊子では「高校の」)水死事件 一人でゆっくりやらせましょう」
刑事1「あー アイツか シャキッとしない若いの……
 たしか名は円馬
(えんま)とか」

円馬と呼ばれたオールバックの青年は事件ファイルらしき物を見ながら何やら嬉しそう。
「ウーン 事件性は薄そうだが ウヘヘヘ い〜〜な〜〜
 女子高生てのがウレシイぜ!」

あ、うん、間違いなくえん魔くんの系統だな(笑)
「ン!? なんだこの検屍(けんし)結果は?(水死にしちゃー変じゃねーか?)」
何かに疑問を抱いた円馬は先輩刑事に聞きに行く。
刑事3「あー たしかに変だ こんな水死体聞いたことねえーよ
 溺れて肺に水がいっぱいてのは分かるが(冊子では「分かる」)
 水着のオシリのところが裂けて肛門が開き 腸まで水がいっぱいてのがな
 ま!初めてのケースだな……」
円馬「ウウム……」
刑事3「ふつうで考えたら浣腸(かんちょう)でもしないと入らない
 俺も変に思って調べたが 浣腸などだったら肛門が傷ついたりするが 無かった
 ま……事故じゃないの?
 事故とすると飛び込みのショックで瞬間的に水圧がかかり そうなったとか……?」
円馬「ありえるわけ?」
刑事3「だからそんなの聞いたことないって
 かと言って人為的なものと考えるのも変だしな……」

円馬は一人、事件のあった屋内市営プールに向かう。
管理人のお爺さんに事件当時の話を聞き込みに来たのだ。
管理人「ハァ──刑事さん(冊子は「刑事さんで」)もう さんざん話したとおりですが……」
円馬「そこをもう一つ 担当替わりましたので スンマセン」
管理人「あの夜は みなさん遅くまで練習をしてまして
 ミドリ女子学園高校の水泳部のみなさんが 大会が近いとのことで遅くまで練習されてました」
円馬「なるほど じゃあーその日は 女子校の貸し切りだったんですね」
管理人「……というか……いつもです いちおう ここは市営プールですが……
 使っているのはミドリ女子学園(冊子は「ミドリ女子高校」)だけでして……
 夏の一時期 近所の子供が来るくらいで……
 だいたい このあたりは若い人は 学校出たら都会へ 出ていってしまうので
 ことに男はいない いるのはわしのような年よりばかりで」
円馬「そういえば若い人は見ないですね」
管理人「ミドリ女子学園は過疎化を恐れた市が他県から誘致した学園でして
 若い男のいない土地なら親が安心ということで」
円馬「かわいそう まるで修道院じゃないの…… 生徒はつまんねーだろうな……
(オレなんかモテモテかも)」

管理人「その日は9時ちかくに帰られました」
ー回想ー
帰宅女子「おじいちゃん 一人だけ残ってるのよ……」
管理人「一人だけですか?」
見に行くと飛び込みの選手が一人で練習をしてました
管理人「あとどれくらいやるんです もう閉めたいんだがね」
私は その子に声をかけました
水泳女子「すみませ〜〜ん あと15分ぐらいで終わりまーす おねがいしまーす」
ー回想終わりー
管理人「じゃあ15分だよーと言って 一旦管理室に戻って帰り仕度をし プールに行ったら
 あの子がプールの真ん中に浮かんどった…… かわいそうに……」
円馬「ウーン……その間に人が入った形跡は?」
管理人「まったく無いです それはハッキリしています 誰か入れば管理室で分かる」
円馬「そうなると事故ということになりますが……?」
管理人「もちろん事故です 事故以外ありません」
その時ドアを開ける音が響き、黒髪ポニーテールの若い女性が入って来る。
管理人「ア……由季子先生」
由季子「オジさん 来るのが遅くなってゴメンなさい 原さんのこと聞きました
 あ お客さんですか?」
雪ちゃんぽい子来た──!!!!(≧∇≦)
管理人「あ コチラ刑事さん 事故のこと聞きに来てるわけで」
由季子に名刺を渡し自己紹介する円馬。
円馬「円馬と言います あなたは?」
由季子「マ 刑事さん 円馬君平(えんまくんぺい)って ア 知ってる私 昔あったわ
「ドロロンえん魔くん」(冊子では どろろん炎魔くん)てアニメ……
 あれと同じですね」アハハハ
円馬「俺 アニメキャラでないです 本名ス」トホホ
タイトル出た──!!!!(≧∇≦)
由季子「私 日女由季子(ひめゆきこ)と言います 水泳のコーチしてます
 体育大の学生ですが水泳のアスリートです
 ミドリ女子学園の水泳部に時々コーチに」
円馬「そうですか……」

外に出た二人は亡くなった女生徒について会話する。
由季子「カナダの大会に参加していて来るのが遅れてしまって…… お葬式にも出られなくて……」
円馬「今のところ事故の可能性が高いのですが……亡くなった原さんて生徒は?」
由季子「私 いまだに信じられないんです 彼女が 水の事故だなんて!」
円馬「というと泳ぎうまかったんですね 水泳部だから当然だけど……」
由季子「私 飛び込みの選手ですけど あの娘(こ)はすごい素質でした
 あのまま伸びてくれればオリンピックも夢ではないかもと……
 健康上も問題なかったし 溺れるなんて考えられない」

円馬は市役所で調べ物をしている。
円馬「ン〜? 山の村にしては水死が多いな
 あの すみません少しうかがっていいですか?」
市役所の人「ハア何でしょ 私で良ければ」
円馬「村の方の死因に水死の方が多ようですけど──」
市役所の人「あ──そのことですか…… 翠湖(すいこ)ですよ」
円馬「すいこ?」
市役所の人「近くの山に小さい湖があります 昔からそこで泳いで溺れる人が多くて……
 でも最近は無いです 市営プールができたおかげで翠湖で泳ぐ子がいないですから
 翠湖ですか?近いですよ 30分ほど山道登ればすぐです」

円馬「ふう」
スーツの上着を片手に山道を登る。
円馬「あった──」
目の前が開け、木々に囲まれた湖が見える。
円馬「周りの木々の緑が湖に映って 翠湖って名にふさわしいな
 水の清らかな おだやかな湖だが……」
老人「けっこう深いところがあってね 昔から溺れる人が多かった……」
円馬の独り言に答えるように老人が現れた。
老人「昔は この湖には魔物がいると言われたもんじゃ」
円馬「魔物!?」
老人「すいこじゃよ ワシが子供のころはよく そう 土地の古老から言われたもんじゃ
 湖に入る前によ〜〜く水の中を見て何もいないか確かめろと…… 言われたもんじゃ……
 水の中の光の加減を確かめるように見て……
(何かが見えた気がしたら水に入ってはいけないと)」
遠い昔を思い出すように語る老人。
円馬「あ あの すいこって何です? 湖の名も翠湖ですよね?何か関係が……?」
老人「もちろん すいこが住んでいたから翠湖と名がついたんじゃ」
円馬「すいこって一体?」
老人「なんじゃ すいこも知らんのか 今時の若いモンは民話とか伝説は迷信と思うようじゃのう……
 すいこ……水の虎と書く! 地方によってはガラッパとか河太郎とか……」
円馬「アッ!それって河童!? カッパじゃないですか」
老人「そうじゃ まあカッパの一種じゃな 水の妖怪じゃ」
カパエルのことか──っ!!!
この老人はシャポー的役回りとすればやはりえん魔くんモチーフだよなこの話。
円馬「それで そのカッパ 水虎は何をするんです 人を殺したりするんですか 溺れさすとか?」
老人「聞いたことはないか?水虎も河童だ 尻小玉(しりこだま)を抜くんじゃよ!」
円馬「アッ……そういえばそんな話聞きました 人の肛門付近にある玉を抜いて食らうって……
 でも 実際にはそんな玉は無いですよね」
老人「アハハ 玉違いじゃ
 キンタマのような玉を探しても そりゃー無いよ
 玉とは正しい字で書くと”魂”じゃ たましいという意味の魂
(たま)なんじゃ」
円馬「魂!?」
老人「あるいは霊という字じゃよ 御霊(みたま)の霊(たま)
 つまり水虎は人の尻の穴から”魂”をひっこ抜く!」
円馬「!?」
尻小玉というとアニメ24夜にあったなー。よりによって最終回1話前にこの話かと苦笑した思い出。
老人「幽体離脱という言葉知っておるかね
 そう……人間やあらゆる生物は 肉体と幽体が重なり合ってこの世に生きておる
 この幽体が完全に離れたら肉体の”死”が訪れる この幽体が魂じゃ
 妖怪 水虎は 肛門から手を入れ 人の魂を 引き抜く力を持っている
 完全に抜かれたら その者は死に 魂がちぎれ 少し抜かれたらその者は ふぬけになる……
 それが 水虎という妖怪が この湖でやってきたことなんじゃよ」
円馬「し しかし 今時そんな妖怪なんているわけない!」
老人「いやいや……いつの時代でも水虎は現れる
 水虎は水が妖怪化したものじゃよ 古い水にこの世の邪悪な想念が溜まり 化物と化した物じゃ
 人の世に”悪の心”を抱く者がいるかぎり 水虎は生まれ出る
 気をつけることじゃ」
円馬「ア 待って もう少し聞かせて…… ハッ!?」
老人が消えるようにいなくなると、何故か寝ていた円馬が目を覚ました。
「夢!? なんだ いつの間にか湖のそばで眠ったらしい しかし……今の夢?
 やたらリアルだったし……今度の事件と符合している しかし……水虎か?
(いくらここが翠湖だからって妖怪だなんて……)」

烏の鳴き声が聞こえ、既に夕刻になっていた。
「アッ……もうこんな時間か?
 相当眠ってたみたいだ…… ドレ 湖を一回りして帰るとするか…… ン!?」

歩いていると、森の中で何やら作業中の二人組を発見する。
円馬「すみませーん 何の作業ですか 警察の者ですが」
作業員1「あ〜〜女学園の事故調べてる刑事さんかい
 取水
(しゅすい)ですよ プールへ ここの水を送ってます」
円馬「プール!市営プールの水ですか!? ここの水を 翠湖の水を!?」
作業員2「ここは 水質がいいんで もちろん途中で殺菌消毒しますがね……
 週に一回の水の入れ替え日でして」
円馬「週?じゃあ!事件のあった日も」
作業員1「あーそうだね 今日ももう送り終わってバルブを閉めてたところさ」

その頃、由季子はシャワーを浴びていた。
由季子「事件後中止になっていた水泳部の練習が明日からあるの……
 その前に 今夜 先に泳ぎ初めしとくの……」
昼間それを聞いていた円馬は急いで山を降りる。
「由季子さん泳いじゃダメだ…… 水虎が!! 水虎が出るかもしれない!」
(妖怪なんてありえなくないか!? バカみたいだ常識じゃありえねえ!! しかし 気になる
 なんでもなくて笑われたっていい! とにかく止めなきゃ!)


水着に着替え終わった由季子がプールへ行く。
円馬は息を切らしながら市営プールへ戻って来た。足速え!
管理人「オヤ 昼間の刑事さん」
円馬「プールの水が危険かもしれない 水を抜いて下さい!」
管理人「エッ!? そんな!今は抜けません たった今 日女先生が飛び込み台に」
由季子は既に飛び込み台の上にいる。
円馬「日女さんの飛び込みを止められたらいいが…… ダメだったら飛び込んだ直後に排水を……
 叫んで合図する」
既に遅く、由季子が飛び込んだ!
円馬「日女さん!由季子さん!! 排水だ〜〜っ!! 急げ!排水を頼む!!」
水中の由季子を、水虎が襲う!! 直後、円馬がプ−ルへ飛び込む。
シャツは脱いで水中眼鏡までしてるわ。借りる余裕あったん?とか、細けえ事はいいか。行け!円馬!
由季子の体に絡み付く水虎を引き剥がし、水虎は排水口に吸われて行く。
円馬「日女さん 大丈夫ですか」
むせる由季子。水量が減り、側へ駆け寄る円馬。
円馬「日女さん しっかり」
由季子「アッ!オシリに何かが!」
円馬「た 大変だ! し 失礼しますよ……
 妖怪水虎の腕が もぐり込もうとしてるんです オレが引き抜きますから」
由季子「あッ」
腕だけでも動く執念、妖怪らしくていいぞ!
円馬は由季子の尻に残った水虎の腕?を掴み、力任せに引っ張る。
水が引くと水虎の腕らしき物は力を失い 彼女のオシリから大量の水となって流れ出て終わった

数日後……
事件後改めて市営プールを訪れる円馬。仕事中の由季子に声を掛け、プールサイドのベンチへ。
円馬「事件をどう説明しようかと迷ったんですけど とにかくまんま上司に話してみました!
 妖怪水虎の話をです……」
由季子「マアー じゃあ 私があんなになったことまで?」
円馬「いや それはその うまくゴマかして
 でも 二人ともたしかに水虎を見たし 危ないところだったと……」
由季子「でも…… そんな話 誰も信じないですよね……妖怪だなんて」
円馬「ところがすぐにマトモに聞いてくれまして……翠湖を埋めることになりました」
由季子「マァーホント!? スゴ──イ 良かった
 また 翠湖の水がプールに使われたらコーチやめようと思ってました」
円馬「そりゃーそうですよね 怖い思いしたんだから……」
こっちの由季ちゃんは普通の人間だものね。戦う力ないし逃げたくなるのも分かる。
「ゆきちゃん」に敬語で話す「えんまくん」も新鮮だな〜。
円馬「とにかく土地柄なのか そういう伝説の多いところで
 都会じゃ 信じてもらえない話が通じるようです
 妖怪 水虎が何なのかは分かりませんが 何か次元の違う異次元の生物という気がしています
 そしてあの湖は 異なる次元の別世界とつながる場所だったのかも……
 埋めてしまえば もう 水虎はこれないと思います」
雪子姫「ありがとう ウフッ あなた やっぱりえん魔くんね 妖怪退治したんだもん
 ネッ 今度デートに誘ってくれません?」
円馬「エッ!? いいんですか?」
由季子「だって 命の恩人じゃない! それに
 私の あんな恥ずかしい姿見た人 恋人でなければイヤッ!」
赤くなりながら円馬にこっそり耳打ち。積極的だな!良いぞ〜^^
生徒「先生 もう一度形を見て下さ〜〜い」
雪子姫「ハーイ ごめんね もう用はすんだわ」
円馬「ガッチャ!」
嬉しそうに両手ガッツポーズの円馬だった。やったね!
ジ・エンド

ところで豪ちゃん漫画でたまに出て来る「ガッチャ」って方言か何か?
「やったぜ!」みたいな意味合いだろうと解釈してるのだけど合ってるかしら?

翠湖/完

翠湖トップ

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