そこは地獄。棘状の岩山、髑髏の岩、煮えたぎる川。
人影のようなものが蠢くその中に多くの悲鳴が響き渡る。
「きゃあ〜っ」
全裸の女性が二本角の鬼に追われている。(ここまで単行本加筆)
鬼は容赦なく、女性の胸を鉄杭のような物で突き刺した。
そのすぐ側をマントの人影が通る。
悲鳴とうめきと怒号飛び交う世界。(掲載時の柱コメントより)
───そこは地獄!! 天空に黒い太陽が燃え 奇怪な岩山が林立する大地に赤黒い光を落としている
黒い太陽の放つ熱風と 冷たく凍りついた大地からの冷気が 空気中にぶつかり合い 深い霧を 地獄中にただよわせていた‥‥
「ギャア〜ッ」
串刺しにされた亡者達が苦痛に悲鳴を上げる。と、コツコツと足音が響いた。
鬼1「グオッ!?」
鬼2「ゴッ」
鬼1「誰か来るぞ」
霧の中にうっすらと歩く影が浮かんで来る。
鬼1「誰だ〜〜ッ 針山地獄を我らの許しなしで歩き回るヤツは!?」
炎魔「仕事中か?すまんな‥‥ 近道なので通り抜けさせてもらおうと思ってな‥‥」
鬼2「ヒッ あなた様は!」
鬼1「え‥‥ 地獄の鬼公子!炎魔様!!」
頭頂部が左右に割れた帽子を被り、手に竜の頭が付いたステッキを持つ黒いマントの青年・炎魔。
…あれ?シャポーじゃない。目付き悪くて若返った感じだ。
炎魔「悪いが通らせてもらう 大王からの急な呼び出しなのでね」
鬼2「ハハーッ! お通りください!」
地獄の鬼すら萎縮させる炎魔に、針山亡者の娘が助けを請う。
亡者娘 | 「あああ‥‥助けて 痛い そこの人 無実よ!私 悪いことしてないのに」 |
炎魔 | 「フ‥‥ お嬢さん 地獄でウソは通じないよ」 |
亡者娘 | 「あ〜〜あ 痛い 苦しい 助けて‥‥」 |
炎魔 | 「苦しまぎれのウソであっても 地獄でのウソは苦しみの時間を長びかせるだけだよ」 |
あのやんちゃなえん魔くんも大人になったな〜と感じる冷静沈着振り。
地上から数百段はあろうかという長い階段が続く先に黒くそびえる建物が見える。
閻魔殿(えんまでん)
炎魔 | 「久しぶりだ ここへ来るのは‥‥ ここが大王の住む館だ ガキの時 来て以来だ」 |
キッド | 「シャポじいちゃんから 聞いてるゾ 炎魔のアニキが 子供の頃に人間界で大活躍したってことは‥‥ 一緒に活躍したってのが じいちゃんの自慢だった」 |
えっ、ちょっと待って、その口ぶりだとシャポー…隠居しただけで生きてるならいいが…。
キッド | 「孫のオイラも人間界とやらに行ってみてーもんだゾ」 |
炎魔 | 「たいした所じゃねーぞ 地獄の方がよっぽど面白ぇーや シャポーキッド」 |
シャポーの孫!シャポーキッド!という事は嫁さんおったんかシャポー。そっちが吃驚。
炎魔「鬼公子炎魔だ 通るぜ!」
階段を登った先に立ち並ぶ守衛らしき鬼達に一声かけ、奥へ進んで行く。
炎魔 | 「閻魔大王!!地獄の王よ!! 求めに応じ来てやったぜ!! オレを何用で呼び出した!?」 |
閻魔大王 | 「来たか炎魔よ!! 冥界を創りし神 ハデス神の血をひく者よ!! 地獄の鬼公子(プリンス)炎魔よ!!」 |
炎魔の見つめる先に雷鳴が轟き、黒い霧が立ちこめ大王が現れる。
この辺の演出ドロロンの頃と同じで嬉しい^^
「そして我が甥炎魔よ!? 久しいのォー」
あー、昔の地獄絵図によく描かれてる閻魔大王図っぽい外見になってる。
ドロロンの頃のロボットっぽい甲冑姿は若気の至りって事でいいですか?(笑)
炎魔 | 「ジジィ いや大王 オレになんの用だ つまらん用なら許さねえからな!?」 |
閻魔大王 | 「ワッハッハッハ あいかわらず威勢の良いヤツ」 |
甥っ子にジジイ呼ばわりされても気にしない大王様も昔に比べ落ち着いたなー。
逆に炎魔は大王の前だとえらい口悪くなるのな。さっきまでの紳士さはどこに。
閻魔大王 | 「じつは炎魔よ この地獄をゆるがす大事件があったのじゃ 表向きは なんとか平穏に治めることができたが‥‥ 一歩まちがえれば きわめて危なかった!」 |
炎魔 | 「フム じゃああの噂は本当だったのか? 雷魔大公(らいまたいこう)の反乱!?」 |
閻魔大王 | 「聞いておったか? さよう‥‥ヤツ 雷魔は地獄の支配権をワシから奪おうとくわだてた! 大公という地位ゆえ 時が来れば大王に立候補できるものを‥‥ ひきょうな手でワシを倒そうとしたのじゃ!」 |
あ、血族じゃなくても立候補出来るんだ。総理大臣みたいな役職なのか大王職。
閻魔大王 | 「なんとか 事前に反乱をふせげたが 雷魔とその反乱に加わった者どもが人間界に逃げた!」 |
炎魔 | 「人間界に!? もしや‥‥その反乱に加担した者とは」 |
閻魔大王 | 「地獄の最下層に閉じ込めておいた古き物どもじゃ!」 |
炎魔 | 「妖怪!? 古代よりの魔物どもか? かつてと同じように また人間界に妖怪が!?」 |
背景に妖怪画でお馴染みの(今は鬼太郎と言った方がメジャーか)妖怪がちらほら。
ドロロンはほぼオリジナル妖怪だったが、鬼公子は原点回帰になるのかな?
不明 | 「妖怪が人間界にはびこれば 人に不幸と災いをもたらす!」 |
炎魔 | 「つまり またオレに妖怪退治をしろと!?」 |
閻魔大王 | 「やれるのは炎魔 おまえしかおらぬ!」 |
炎魔 | 「ガキの頃なら勇んで行ったが‥‥さて‥‥」 |
雪鬼姫 | 「まさか雷魔が怖くて 人の不幸を見すごすつもり?」 |
炎魔 | 「な なに!?」 |
すぐ隣で吹雪の渦が舞う。
炎魔 | 「お‥‥おまえは?」 |
雪鬼姫 | 「しばらく会わないうちに弱虫になった?それとも私のように冷たくなった? でも私は体は冷たくても心はあたたかい あなたが行かなくても私は 人を救いに行くよ!」 |
雪ちゃん来たー!相変わらすお美しい。そして昔より正義感に溢れていらっしゃる。
炎魔 | 「雪女一族の姫君 雪子姫! むかしオレと一緒に人間界で妖怪退治した雪ちゃんかー!? なつかしいや‥‥」 |
雪鬼姫 | 「もう子供じゃない」 |
えー。暫く会ってなかったって事だよね。意外過ぎる。あのスケベなえん魔くんが雪ちゃんにちょっかい出さなくなってたなんて!
雪鬼姫 | 「雪子姫あらため雪鬼姫(ゆきひめ)!」 |
炎魔 | 「そーかー雪鬼姫か? いや たしかに大人になったよ ウヘヘ‥‥メッチャ色っぺぇーぜ よし 分かった!! オレ 行く! 幼なじみの雪ちゃん(雑誌では雪チャン)が行くのなら オレ行く ガキの頃 一緒に妖怪退治した仲だしな 心強いよ! 行こ 行こ 早く行こう」 |
雪鬼姫 | 「な 何よその舌なめずりは? も もしや‥‥ スケベ直ってないの?ガキの時のまんまネ 3メートル以内に近よらないでね」 |
炎魔 | 「そんなつれないこと言うなよ!仲良くやろーよ」 |
やっぱりえん魔くん(炎魔)はこうでなきゃ!(笑)
夜、ビル街を歩きながら携帯で電話中の女性。歩き携帯やスマホはダメ、絶対。
女性「もうすぐ家につくから切るよ ジャーネー」
帰宅の連絡を入れ通話を切る。
女性「ケイタイがあれば夜道も怖くないもんね」
妖怪「ホント〜ニソ〜カ?」
女性「えっ?」
周囲を見回しても誰もいない。
女性「変ね?何か聞こえた気がしたけど‥‥? ソラ耳よね」
妖怪「ソラ耳じゃねーよ ここだここ!」
女性「エッ!?」
妖怪「影だよ おまえのカゲ!」
女性の影がユラリと蠢き、巨大な化物へと変化する。
妖怪 影暴師(かげぼうし)
女性「きゃああぁ」
影暴師は女性に何をするでもなく、包むように消えた。
女性「ハアハア」
警官「もしもし どうしました!?」
地面に両手をつき息の荒い女性に、近くに居たらしい警官が走り寄る。
警官「悲鳴を上げてましたよね?」
女性「な‥‥なんでもないよ ちょっところんだだけ」
警官「本当に?このあたりはチカンが多いんですよ 変なのがいたんじゃないの?」
女性「なんでもねーって言ってんだろ シツケーな」
警官「そんな言い方ないだろ 心配してるんだから‥‥」
女性「ウルセ〜んだよ 警官だからってウルサクまとわりつくんじゃねえ!」
警官「な‥‥!?」
女性は警官の顔面に思い切り肘鉄、更に飛び膝蹴りを食らわした。
女性「ケッ ケケッ」
先程とは形相が打って変わり、性格も突然凶暴化。これは妖怪の仕業なのか…?
一人の紳士がどこかの建物のドアホンを押す。
男性 | 「こちらが炎(ほむら)探偵の事務所ですか?」 |
声 | 「ハイ」 |
ドアが独りでに開き、スーツ姿でポニーテールの女性が出迎える。
男性 | 「!? こ こちらはオカルト事件をあつかう探偵と聞いてきまして‥‥」 |
姫子 | 「いらっしゃいませ オカルト事件の専門探偵社です」 |
男性 | 「オカルト専門 それはまた心強いです そんな探偵がいるとは思えず 半信半疑で来たのですが‥‥」 |
姫子 | 「オカルトがらみの事件は じつは多いんですよ 誰にも信じてもらえず困っている人も多いんです」 |
男性 | 「アナタは?」 |
姫子 | 「炎探偵の助手 雪 姫子 そしてあの方こそ‥‥ この世を騒がすオカルト事件を解決する‥‥」 |
シルクハットで顔は見えないが、机の上に両足を乗せふんぞり返っている探偵の男。どう見てもお客様を応対する態度じゃないこの男は……
「オカルト探偵 炎 又郎(またろう)!! ヨロシク」
ま、またろう……。先生もうちょっと格好良い名前付けてあげてよ^^;
ほむらを「えん」と読めば「えんまたろう」、つまり…「炎魔太郎」って事でいいです?
炎魔は髪を後ろで一本に束ね、通常のマントスタイルよりも長髪に見える。
炎 | 「オカルト事件と言っても いろいろなんだが‥‥」 |
男性 | 「ア アノー 帽子が浮いてますが?」 |
炎 | 「オット おとなしくしてろ!目立つなと言ってるだろ」 |
そう言うとシルクハットは勝手に帽子掛けに飛んで行った。
男性 | 「‥‥‥‥」 |
炎 | 「あ‥‥いや 帽子のぶんざいで自己主張が強いもんでネ まだ若いので」 |
姫子 | 「炎先生は探偵の前はマジシャンでして どうぞおかけください」 |
炎 | 「ワハハハ まあーそんなもんです」 |
男性 | 「はーはーなるほど‥‥」 |
雪ちゃんのナイスフォローで上手く誤魔化せたようだ。さすが助手。
男性 | 「オカルト事件と言いきっていいのか分かりませんが‥‥ 娘が別人になってしまったのです」 |
炎 | 「フーム なにやら感じますな! たしかにオレ向きの事件かも‥‥」 |
男性 | 「おとなしくやさしい娘が 理由もなく暴力をふるうようになったんです まるで別人です 力も強くなり顔つきまで変わってきました 脳神経科の医者に相談しても異常はない(雑誌では「無い」)と‥‥ 気持ちの問題であろうと言われ‥‥」 |
炎 | 「なるほど わが探偵社へ来られたのは正解です なにやら憑き物つきの匂いがするな この世は目に見えるものだけが現実ではない 目に見えぬものもあるのです ──それは‥‥ 人間が感知することのできない 意志を持った精神体です! ──つまり邪悪な魂!肉体を持たぬ魂なのです!! 特殊な感覚を持つ者だけが彼らをキャッチできるのです!! たとえばこのオレ 炎探偵のようにだ」 |
男性 | 「な なるほど すると娘は? 目に見えない悪霊のようなものに取り憑かれて(雑誌では「とりつかれて」)いると‥‥?」 |
炎 | 「いや 悪霊よりタチが悪い 昔の 見える人たちは(雑誌では「人達は」) 彼らを妖怪と呼んだ! 案内してもらおう 妖怪落としだ雪クン!」 |
姫子 | 「ハイ 出動します」 |
依頼主の自宅へ。
炎「ホウ 立派なお屋敷ですな‥‥」
外観は洋海小によく似ている。ドロロンに寄せてくれてるのかな。
家主 | 「我が家は祖父の代に事業で大成功した家柄でして 私はボンクラでして 親からの試算を守るのが精一杯でして‥‥ 娘を呼びます この部屋でおまちを」 |
通された部屋のソファに座る。
炎「フム! 暴力的になったということは昔 退治した怒黒(どくろ)の一族か?」
おおっ、怒黒の名が出て来るとは。
シルクハットに化けているシャポーキッドは炎魔に注意を促す。
キッド | 「炎魔よ 敵をなめるな この家 妖気が強い」 |
炎 | 「分かっているって オレの妖怪アンテナがビンビンきてる」 |
眉が片方、上下に振動。アンテナモードの時は少し眉伸びるのね(笑)
姫子「敵が大物ってこと? それにしては事件 セコくない?」
雪ちゃんのポニテのリボンに目玉がギロリ。おお?こんなギミックあるんだ。
ポニテ姫子の仕事服は巫女さんスタイル。
家主 | 「炎探偵 娘です」 |
アカネ | 「ウウ〜〜」 |
家主 | 「暴れるのでしばっております 娘のアカネと申します」 |
アカネ | 「ふぅ〜〜ふぅ〜〜」 |
彼女は影妖怪に襲われていた女性だ。
全裸で腕と口を縛られた状態のまま、医者らしい姿の男二人が一緒に部屋に入って来た。
姫子 | 「お嬢さんをハダカで‥‥ ひどくありません?」 |
炎 | 「まあ それはご家庭のやり方があるから‥‥」 |
家主 | 「とにかく 手におえませんので」 |
炎 | 「たしかに怪しい物の怪の気配を感じます でも娘さんより みなさん全員が妖怪臭い これはもしや炎魔つぶしの罠ですか?」 |
フフフと余裕の笑みを浮かべる炎探偵。シルクハットが舞い、シャポーキッドが本来の姿に戻る。
医者1 | 「だったらなんだと言うんだ!? 大王の手先めが!?」 |
医者2 | 「相手になるか!? 小僧!?」 |
炎魔 | 「この世を乱す脱獄妖怪ども!地獄の特別捜査官 鬼公子炎魔が成敗するぜ!!」 |
キッド | 「グワウ!!」 |
雪鬼姫 | 「同じく雪鬼姫!!」 |
炎魔も雪鬼姫もお馴染みの姿に。二人共一瞬で変身できるようになったんか?
医者姿の二人は妖怪 鬼鴉(おにがらす)、妖怪 斧天狗、家主は妖怪 蛞蝓轆轤(なめくじろくろ)へと変身。
見た目そのままの名前もドロロンから継承されてて分かり易い。
蛞蝓轆轤 | 「炎魔よ 我らのすみかに のこのこ来たのが運のつきだ!」 |
炎魔 | 「火竜杖(ひりゅうづえ)よ!! 炎魔の力を増幅せよ!!」 |
キッド | 「グハハッ 焼け!ぶっ殺せ!」 |
孫は少々過激な性格だなシャポーよ。
炎魔 | 「くらえ〜〜 妖魔を燃やす炎魔の炎だ!!」 |
斧天狗 | 「グォ〜〜ッ」 |
雪鬼姫 | 「雪鬼姫ツララ剣!!」 |
炎魔は斧天狗をあっさり倒し、雪鬼姫は新武器・ツララ剣で、炎魔を鷲掴みする鬼鴉を斬り付ける。
「妖怪 妖魔を凍結させる雪鬼姫ツララ剣受けよ!!」
ギザギザの氷柱の剣で刺されるの痛そう〜。
が、退治したと思われた斧天狗に雪鬼姫が背中を斬られてしまった!!
炎魔「雪鬼姫!!」
2話→
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