小四第七話
●またも、へんなよう怪がでてきて……、ついにえん魔くんまでが………!
(1974年4月号『小学四年生』表紙コメントより)
暗闇にサイの頭と、その額にこぶのような小さい頭がついているものが浮かぶ。
「グエヘヘヘ。 わしの名はよう怪サイシュウ怪!アヘヘヘ。 わしにとりつかれたやつは、どんなことでも すぐに終わりたくなってしまうのだ。 だれにとりついてやろうかな。グヒヒヒ。」
シュ〜ッとその姿が霧のように消える。
トバッチリ | 「ええ、ここでひとまずとりやめにして これからテストをおこないます。」 |
児童達 | 「エーッ そんな…ずるいやー!センセ〜」 |
トバッチリ | 「これ、さわぐでない!」 |
ツトムくん | 「先生 ぼくたちテストなんてきいてないから予習も、復習も………。」 |
トバッチリ | 「だからおもしろいのれーす。平均点以下の人は おかあさんをよびますよ。」 |
ツトムくん | 「ちぇっ、ずるいなあ。」 |
隣の少年 | 「ブツ、ブツ。」 |
大ブーイングをよそにテストが始まり、見回りながら歩くトバッチリ先生。
(フフフフ。先生はこれがいちばんの楽しみなのさ、ヒヒヒヒ。 こんなふうに生徒をいじめなくちゃ、やってられんよ。)
本音はそれか!
トバッチリ「カンニングはいけませんよ。」
その時、トバッチリに黒い霧が近づく。
トバッチリ | 「いちばんできの悪いツトムくん カンニングしてないでしょうねえ。 してたら、百たたきですよ。」 |
ツトムくん | 「してません。」 |
教師棒を構えながらツトムくんに話しかける。目が笑ってるぞ。
トバッチリ「ちぇっ、つまんねえ………。」
こら──!教師が何と言う事を!流石トバッチリ。本音を隠さない!
黒い霧がトバッチリの周りを囲み……
トバッチリ | 「う……。」 |
ツトムくん | 「ムム、わかんねえや。このままじゃまた、かあさんよびだされちゃう。 カンニングしようかな。」 |
トバッチリ | 「終わり!!」 |
ツトムくん | 「ギクッ 先生、まだカンニングやってません。やろうと思っただけです。」 |
トバッチリ | 「? アハハハ ツトムくんなに言っとるの?テスト終わりね。アハハ。」 |
ツトムくん | 「?」 |
笑いながらテスト用紙をビリビリと破くトバッチリ。
トバッチリ | 「アハハハ、なぜか授業も終わりたくなっちゃった。どうしてだろ? みんな帰っていいよ。」 |
児童達 | 「? ?」 |
児童達 | 「ワーッ とにかく たすかったあ。 帰ろ 帰ろう。」 |
トバッチリ | 「? 先生をやめたくなっちゃった。」 |
態度が急変した先生を不思議に思いつつも、子供達は大喜びで教室を飛び出して行く。 (子供の中に豪ちゃん他誰かに似た人たちがいるよ・笑)
その直後、あの黒い霧が立ちこめたと思うと…
「帰るのやあめた。」
「やめよう。」
と、ゾロゾロ教室に引き返して来る。
洋海学園ものおき
ファー…と大きな欠伸が漏れる。まだ眠そうなパトロール隊ご出勤。
カパエル | 「いい天気でしゅね。」 |
えん魔くん | 「ほんまほんま。 こんな日でもツトムたち、教室で勉強してるんだな。かわいそうに。 ちょっくらのぞいてみるか。」 |
雪子姫 | 「じゃましないようにね。」 |
雪子姫とカパエルを背負い、教室の窓を覗き見るえん魔くん。
「どんなことしてるのかな?」
すると、全員が机に横たわったり椅子で眠っているのを見て驚く。
えん魔くん | 「ありゃ シャポーじい 人間の勉強ってねむることか?」 |
シャポー | 「まさか。」 |
カパエル | 「えん魔くん よう怪アンテナが鳴ってる。」 |
えん魔くん | 「あっ!」 |
ビビビ・・・と反応のあった場所は
えん魔くん「中だ!!」
ガシャーンと窓をぶち壊し突入するパトロール隊。
トバッチリ | 「人間やめたくなっちゃった。」 |
シャポー | 「ム!まさか? これは、もしかしたら……。 サイシュウ怪のしわざかも!」 |
えん魔くん | 「シャポーじい、なんだサイシュウ怪っての?」 |
シャポー | 「えん魔の国(※)いちばんの おそるべきてきじゃ。 やつにとりつかれると なんでも終わってしまう。 やつが出てきたのでは えん魔くんのまんがも終わってしまうかも。」 |
えん魔くん | 「ゲー!」 |
(※)単行本では「地獄界」と表記されている。
オリジナルでも第1話では「地ごく」2話では「魔界」とも言っており、安定していない。
えん魔くん | 「いかんな そういうよう怪は はやめにたいじせにゃ。」 |
シャポー | 「気をつけろ やつはなみのよう怪ではないぞ。」 |
サイシュウ怪 | 「フフフ」 |
えん魔くん | 「むっ。」 |
シャポー | 「天じょうじゃ!!」 |
サイシュウ怪 | 「えん魔、きさまの力でこのおれを やっつけられるかな? 今こそきさまを終わりにしてやる。」 |
頭が体当たりをしてくるのを飛び上がってよけるえん魔くん。
えん魔くん | 「おっと。 火炎ぼう。」 |
サイシュウ怪 | 「ワハハハハ。 きりのようなおれは 火など通りぬけてしまうわ。」 |
えん魔くん | 「あ。」 |
向かって来るサイシュウ怪に、マントにくるまって防御するえん魔くん。
(不明)「ああ、あれれ、えん魔くんのさいごか!!」
えん魔くん「マントよ、サイシュウ怪をつつめ!」
シューンとマントが大きく広がり、えん魔くんごと包まれる。
えん魔くん | 「雪ちゃん今だ!!」 |
雪子姫 | 「れいとうビーム!」 |
シュルルル ピュルルル
あっと言う間に氷の塊になり、ガチーンと床に落下。
シャポー | 「やったやった。」 |
雪子姫 | 「えん魔くんも こおっちゃってる。」 |
カパエル | 「はやいとこ出しましょ。」 |
トンカチで氷を砕き、
カパエル | 「はい、炎えんぼう。」 |
えん魔くん | 「フンギャー」 |
氷が溶け、お尻に火がついて飛び上がり絶叫するえん魔くん。
それよりカパエルが火炎棒で炎を出すとは!アニメでもあったけど誰でも使えるのね?
雪子姫 | 「えん魔くん、よかったわね。」 |
えん魔くん | 「ぼく、えん魔やめたくなっちゃったな。ほんと。」 |
3人 | 「エーッ」 |
えん魔くん | 「よう怪パトロールもやーめたっと。」 |
雪子姫 | 「かわいそうにえん魔くん、サイシュウ怪のガスをすっちゃったのね。」 |
シャポー | 「えん魔の国に帰って病院へいれましょう。 ざんねんじゃが、この小四のえん魔くんのまんがも今月号で終わりになりそうだ。」 |
最後のシャポーの台詞、単行本では
「地獄界に帰って病院へいれましょう。ざんねんじゃが えん魔くんはこん回をもって終わろうー」
となっている。
雪子姫 | 「まって、えん魔くんがいなくったって まんがは続けられるわ。 あたしたちがよう怪をやっつければいいのよ。」 |
カパエル | 「そうじゃそうじゃ。 タイトルは「ドロロンカパエル」なんてどう?」 |
雪子姫 | 「主役は三年はやいわよ。」 |
ピシャッとカパエルの皿を引っ叩く雪子姫。あの〜、そんな落ち着いてていいんですか。
雪子姫 | 「かわいらしく「シュルルル雪子姫」なんていいでしょう。うんきまった。」 |
3人 | 「シュルルル雪子姫をよろしくおねがいしまーす。」 |
と読者にアピールする3人。側でえん魔くんは「もう終わろうよ。」とか言ってますがスルーですね。
永井豪 | 「てなわけで来月号から「シュルルル雪子姫」を始めようと思………。」 |
石川賢 | 「……。」 |
作者までもがノリノリで新連載を予告すると、
サイシュウ怪 | 「そうはさせないぞ。」 |
永井豪 | 「あ!!」 |
最後の力で作者に取り憑くサイシュウ怪。
永井豪「やっぱり、やめた。」
椅子から二人仲良く後ろに倒れる。
「てなわけで 作者もやめてしまいました。やっぱり、このまんがは終わりですね。」
あんた誰?という人(胸に「小4」とある所を見ると小四の編集者?)が拍子木を持ってチョーンと打ち、作者のひっくり返った舞台風の部屋に幕が引かれる。
●サイシュウ怪のために、まんがも終わってしまいました。「シュルルル雪子姫」なんて、始まりませんよ。ねんのため。(柱コメントより)
小学四年生1974年4月号/完
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