※壁紙色、本文の文字色などは雑誌連載時と同じ雰囲気にしてあります。
☆ようかいの世界から、日本にやって来た、えん魔くん。さあ、どんなかつやくをするでしょうか。
(1973年10月号『小学三年生』表紙コメントより)
本編
黒い背景の中で、お馴染みのとんがり帽子にマント、ステッキを持った眉毛の長い少年が読者に話し掛ける。
えん魔くん | 「みなさん ようかいを知ってるかい。
この世の中に、科学でわからない ふしぎなことがおこったら、
それは、みんな、
ようかいのしわざなんだ!!」 |
シャポー | 「ケケケ。」 |
えん魔くんの長い眉毛がピーッと上に伸び、先が光る。
「でたな。 さあ、いくぜ。 おいらの出ばんだ、行かにゃあなるめえ。」
ピューと吹く風の中、背を向けて歩き出す。
えん魔くん | 「えっ、なんだい。 おれがなにものかって?
おれは、えん魔。
ようかいどもと、けんかするのがしごと。 いくぜカパエル!!」 |
カパエル | 「ウオー」 |
えん魔くんが指した方向に、カッパのカパエル。
えん魔くん | 「雪子姫。」 |
雪子姫 | 「オース、えん魔くん。」 |
バア‥と現れた雪子姫はミニ丈の振り袖に黒髪の美少女。「オース」って姫〜;
☆カパエルと雪子姫をしたがえて、えん魔くんの出動だ。がんばれえん魔くん!!(柱コメントより)
☆学校の門の前で、まよっているのは、ツトムくんです。ツトムくんは、えん魔くんの友だちになるんですよ。
…と柱であらかじめ解説してくれる、有り難くも「言うなよ、先に!」な小三(笑)
洋海学園。辺りは真っ暗。学校の正門の前にツトムくんが立っている。
「や、やだな。 やっぱりはいるのよそうかな…… うちの学校は夜になると、おそろしく見えるからなあ。 しゅくだいの出た日に、教科書をわすれるなんて、ぼくも、うんがわるいよ。 学校にはいるのはこわいけど、しゅくだいをわすれた時の先生も、おっかないからなあ。 ええい、行け。」
またも親切に状況説明してくれながら意を決して門をまたぐ。
廊下の向こうから、懐中電灯を持って見回りをしているトバッチリ先生が歩いて来る。
「いやだなあ。
学校にとまるのは、いつやってもいやだなあ。
ねむいし、夜風がさむいし、
この広いたてものに わし、ひとり…… なんか、出てきそうだなあ。」
ぶつぶつ独り言をを言いながら、段々と不安になって来る。
「このへんでまわるのをやめて、帰ろうかな、どうしようかな。
ほら、ほら、そんなことを言っている間 (あいだ) に、なまあたたかい風が……」
窓が開いているのか、ピーと風が流れる。
「こういう時には、なにかありますよ。わしのカンは、あたるんだから、ヒヒヒヒ。
たとえば、なんにもない所から、ヤナギのえだが、首すじに、そうっと……」
台詞に合わせるように、背景にサワサワ〜と柳の枝が1本。
「それが、首にぐるぐると、まきついてくる。」
グルグル。
「なあんてね アハハハ こういうことも、ありますよ。
こわいから、もう帰ろう。」
クル、と踵を返した目の前には、逆さまの状態で丸い顔らしきものがついた柳の妖怪が!
トバッチリ | 「ぎゃああ でた〜」 |
ツトムくん | 「ん。 あれは、トバッチリ先生の声だ。」 |
悲鳴を聞き付けたツトムくんが声のする方へ走り出す。
ツトムくん「ああ、先生。」
トバッチリ「ぎああ あっ ツトムくん。」
柳の枝に体を巻き付かれているトバッチリを見たツトムくんは、
ツトムくん「先生、なにやってんですか。」
トバッチリ「なにやってるかって?トホホホ わたしにもよく、わかりませんよ。」
ビビィ、と言う音とともに「ぎゃあ」と悲鳴をあげるトバッチリ。
しびれヤナギ | 「ヒヒヒ、おれは しびれヤナギ。」 |
ツトムくん | 「先生、まってて、助けをよんでくる。」 |
ドスーン
ツトムくん「あっ!!」
引き返そうとしたツトムくんの目の前に、無数の蛇が入った巨大な人面の壷が落ちて来る。
「おれは、ヘビつぼ。」
壷がその口で喋った。
突然後ろから両足を掴まれるツトムくん。
「あっ」
振り向くと新手の妖怪が!
ツトムくん「ああ」
電気あんま「おれは、電気あんま!!」
両足を開かれ股間をグイグイ押さえつけられる通称「電気按摩」をかけられるツトムくん。
ツトムくん「あひ、やめてアハハ。」
◎しびれヤナギ、ヘビつぼ、電気あんま、へんなようかいばかり出てきますね。(柱コメントより)
しびれヤナギ | 「この学校を おれたちのすみかにするぜ。」 |
ヘビつぼ | 「ヒヒヒ。なかなか すみごこちも、よさそうだしな。」 |
電気あんま | 「えさもたくさんあるし。」 |
その頃、妖怪を探して町の中を走るえん魔くん達。
雪子姫 | 「どう、ようかいはいそう?えん魔くん。」 |
えん魔くん | 「近いぜ。 あの学校だ。」 |
しびれヤナギ | 「ム。」 |
ヘビつぼ | 「どうしたんだ?しびれヤナギ。」 |
しびれヤナギ | 「なにものかが、ちかづいて来る。すごいやつらしい。」 |
トバッチリはヘビつぼの中に入れられて蛇風呂状態。
雷が「ピカ」と光った直後、ガシャーン!と窓ガラスを割って我らがえん魔くん登場!
パトロール隊全員揃って窓枠に立ち、
えん魔くん | 「えん魔くん 地ごくより見 (けん) ざん!! 人間をさわがす、ようかいどもを、たいじにまいった。」 |
シャポー | 「ケケケ。」 |
電気あんま | 「む、えん魔だと!!」 |
えん魔くん | 「カパエル、雪子姫、やっちまえ。」 |
しびれヤナギにバキッと飛び蹴りを食らわすえん魔くん。
ピョンと軽やかに跳ねるカパエルはあっさり捕まり、
電気あんま | 「こしゃくな。電気あんま。」 |
カパエル | 「アヒヒヒ」 |
と電気按摩攻撃を受ける。う〜む、お約束ですな(笑)
トバッチリ「わたしは、いったいどうなるの。」
トバッチリが入ったまま、蛇を飛ばすヘビつぼ。
雪子姫「れいとうビーム!」
襲いかかって来る蛇に指先を向けると、蛇はコチンコチンに凍ってしまう。
雪子姫 | 「わたしは、雪女のむすめ。なんでもこおらしてやるわ。」 |
ヘビつぼ | 「これは、どうだ。」 |
トバッチリ | 「あ〜ん」 |
蛇に巻き付かれたトバッチリを雪子姫に向かって放り投げる。
雪子姫「あ〜っ」
ドサ、と雪子姫にぶつかる。
雪子姫「ああ」
トバッチリごと蛇に絡まりつかれた雪子姫、ピンチ!
雪子姫 | 「えん魔くんたすけて。」 |
トバッチリ | 「なんか楽しいような、くるしいような、へんな気もちです。」 |
えん魔くん | 「あっ。」 |
一瞬気を取られた隙に、しびれヤナギに巻き付かれるえん魔くん。
えん魔くん | 「う。」 |
しびれヤナギ | 「どうだ、ヒヒヒ。 カッ 死ね、えん魔。」 |
しびれヤナギがその名の通り電撃を放つ。
えん魔くん「これくらいで、おれさまを、たおしたつもりか。」
おお、「おれさま」!ちょっとコゲながらも余裕の笑みを浮かべるえん魔くん、かっこいい!
えん魔くん | 「よう能力火えんぼう!!」 |
しびれヤナギ | 「ぎゃああ」 |
ステッキから炎が噴き出し、ヤナギを焼き殺す。
続いてマントを外すと、
えん魔くん「おいらのマントは、むちにもなるんだ。」
鞭に変形させたマントで、電気あんまとヘビつぼを叩き殺す。
あんま、一打ちで首飛んでるよ!うっかり当たったら軽く腕くらい落としそうな威力だ。
トバッチリ | 「さすが、えん魔くんは、強いですね。 来月号はもっと、すごいひみつが、出てくるよ。楽しみですね。」 |
◎来月号では、もっともっと、きみのわるいようかいが出てきます。えん魔くんをおうえんしてね。
(柱コメントより)
小学三年生1973年10月号/完
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