遠くより来たる異形の者たち。その正体は…(掲載時の柱コメントより)
本編
満月の向こうから、大きくマントを広げた青年が白い着物の女性を抱きかかえて飛んで来る。
青年の腕には緑色の不気味な生物もすがりついていた。
もうお判りだろう、妖怪パトロール隊である。
ビルの屋上に降り立つ。夜空の向こうに飛行船が浮かんでいるのが見えた。
炎魔くん「……はっ… ぶへっきしゅ!!」
台詞より先にくしゃみを一発。
炎魔くん | 「確かにこの建物(ビル)あたりから”変な”妖気を感じるんだがなあ… む〜〜 風邪のせーで妖能力アンテナの感度が悪(ワリ)いぜ」 |
眉毛を動かしながら辺りを探る炎魔くん。妖怪でも風邪引くんだね。
カパエルは先程のくしゃみで炎魔くんの頭から振り落とされたシャポーを冠る。
カパエル | 「よっ …と!」 |
炎魔くん | 「ちっ… なんか熱まで出てきたっポイぞ…くそ〜」 |
雪子姫 | 「あら炎魔くん熱あるの?じゃあ冷やしてあげよっか?」 |
炎魔くん | 「いやいやいや 雪子姫のそれはシャレになんねーから!エンリョしとく…」 |
指先をパリパリと火花のように閃光させる雪子姫に、鼻水垂らしながら丁重にお断りする炎魔くん。
元々体温高そうなイメージなんだが風邪の発熱には弱いのか。
カパエル | 「たしかこのへん…最近ぶっそうな事件(ヤマ)がひん発してる場所(トコ)っすよねェ ひょっとしてなんかの妖怪がらみだったりして」 |
雪子姫 | 「どうだろ…とりあえず調べてみましょうか?」 |
炎魔くん | 「…ん〜…たしかに”妖しげな気配”はあるんだけどよー (なんか…変…なんだよなあ) 昨日(ゆーべ) 雪ちゃんに”氷漬け”にされたとき風邪やっちまったみたいでよ〜 あ〜〜調子悪(ワリ)い」 |
カパエル | 「ケケケ ケケ」 |
雪子姫 | 「なによ 自業自得でしょ!!」 |
回想シーン。亜空間にある地獄別荘
このデザインは紛れもなく初代『ドロロン』からのもの!
炎魔くん「雪ちゃん!どーよコレ!!」
手に「ヒマラヤ極寒探検ツアー デーモン族もカッチカチ!」のチラシ。TV版だこのデビ(笑)
炎魔くん | 「なーなー行こーぜ行こーぜ 氷河の露天風呂なんてサイコーだろ?楽しいぜ〜」 |
雪子姫 | 「そーね〜 そんなに楽しみなら… 今ここで 楽しんでみれば!!」 |
ここは雪子姫の氷プール。炎魔くんはお約束通り氷漬けに。風邪の原因はこれか(笑)
堂々と風呂場に来る辺り大人になったなあ。やってる事は子供の頃と寸分変わらんけど(笑)
回想終わり。
カパエル「…ダンナもこりないっスよね〜 正直」
炎魔くん「いーじゃん!別に減るモンじゃなし だいたいおれら許嫁(いいなづけ)なんだしよ!!」
許嫁!?そうかー、二人ともこの世界では初代アニメと同じく将来を許された中なのねV
カパエル | 「そのわりにちっとも進展しないんスよねぇ…」 |
炎魔くん | 「そこだよカパエル そこ! 閻魔大王のオジキがよ〜 男は”押し”だって言うからよ〜 オレもちょっと積極的に行ってみたワケよ…」 |
回想コマで大王様が「一押し二押し三に押しじゃ〜!!」と力説されている…(笑)
このお姿は初代^^地獄別荘といい、オリジナルに忠実で嬉しいぞ。
カパエル「…でもそれならわざわざ風呂場じゃなくてもよかったんじゃ…」
炎魔くん「どーせ行くならいいタイミング狙うだろ!!ふつう!!」
カパエル「あ… ふんまへん ふんまへん」
カパエルのほっぺを思い切り引っ張って八つ当たり。いいタイミング=裸?
そんな野郎共を尻目に屋上の非常階段ドアを開けた雪子姫は…
雪子姫 | 「あっ」 |
炎魔くん | 「ん?なんかいたか?」 |
カパエル | 「ひてててて…(痛てててて)」 |
ドアの向こうには床や壁に人型の染みがいくつもついていた。帽子と銃らしき物も落ちている。
カパ・炎魔 | 「?」 |
炎魔くん | 「なんじゃこりゃ?」 |
カパエル | 「???妖怪のしわざっスかねェ?」 |
炎魔くん | 「こんな跡残す妖怪なんて聞いたこともねーぞ」 |
雪子姫 | 「ずっと下まで続いてるわ」 |
階段を下りて行く妖怪パトロール隊。
炎魔くん「…と言って人間のしわざにも見えねえなぁ…」
カパエル「どっちにしても 何かひとモメあった跡…って感じっスよねェ」
ペタペタと廊下を歩く一行に向けられる天井からの目。
ねばついた糸が雪子姫とカパエルを搦めとる。
雪子姫 | 「きゃ!!」 |
カパエル | 「キャ〜〜」 |
炎魔くん | 「雪ちゃん!?」 |
カパエル | 「きゃ〜〜 いや〜ん」 |
蜘蛛女 | 「はっ! まさかあの女に仲間がいたとはねえ… おどろいたよ」 |
二人を手繰り寄せたのは蜘蛛女の…妖怪?いや、これはタランチェパンサー!
『キューティーハニー』のタランチェパンサーではないか!
とすれば壁や床についていた染みは下っ端戦闘員が溶けた跡…成る程。
炎魔くん | 「ああ?なにワケのわかんねーコト言ってんだてめぇ (こいつか?”変な”妖気のモトは… いや…すこし違うな…もっとこう…)」 |
雪子姫 | 「コラ!炎魔!! 早く何とかしなさいよもー!!」 |
炎魔くん | 「あ!おしい!! ちょい右! もう少し!!」 |
雪子姫 | 「え? ちょ!? やん」 |
にやけた顔で覗き込む炎魔くん。これもお約束ですな(笑)
炎魔くん | 「なんてな 燃えちまえ」 |
タランチェ | 「ゲ!!」 |
にやけ面が一変、ステッキからいきなりの火炎放射。
ちょっとちょっと!雪子姫とカパエル人質に取られてるんですけどー!?
タランチェ「ぎゃぁああああああぁ」
炎に包まれ消滅するタランチェパンサー。ああ…タランチェちゃ〜ん!・゚・(つД`)・゚・
炎魔くん「ぶへっくし!! あーも〜 体調悪(ワリ)いのにムダな妖力使わせんなって…」
氷の塊が2つ落下して来る。中から雪子姫とカパエルが。
雪子姫 | 「ゴホッ なんてムチャすんのよ!! わたしの”氷化粧(ワザ)”があと少し遅かったら黒コゲよ!!」 |
炎魔くん | 「いやーさっすが雪ちゃん!!信じてたよ〜〜」 |
雪子姫 | 「…あんた昨日(ゆーべ)の仕返しのつもり?」 |
その時、炎魔くんのアンテナに反応。
炎魔くん | 「!? しっ」 |
雪子姫 | 「あ ごまかした!!」 |
炎魔くん | 「いやちがうって 例の”変な”妖気のカタマリが 近づいて… 来(く)…」 |
背後の壁に大きな亀裂。壁を割って出て来たのは仮面の女性と剣を持った女性。
シスタージルとキューティーハニーだああ!!
雪子姫 | 「あ!?」 |
炎魔くん | 「!?」 |
ハニー | 「シスタージル!!」 |
ジル | 「ハニィィイイィィ」 |
戦闘真っ最中の二人は炎魔くんの背中越しに、ハニーがジルを押す形で突進。
炎魔くん「がっ」
壁の破片を顔面に受けた炎魔くんは避けるタイミングを失ったのか押されるまま窓を突き破る。
雪子姫「炎魔くん!!」
冒頭の飛行船はパンサーの物だったらしく縄梯子が下り、ジルが炎魔くんを足場にして飛び上がる。
ハニー | 「あ!?」 |
炎魔くん | 「ぐへっ」 |
ジル | 「ハッ」 |
ハニー | 「くっ…」 |
逃げるジル目掛け、ハニーもまた炎魔くんを足場に飛び上がる。
炎魔くん「がっ」
炎魔くんのマントに刺さっていた ハニーのシルバーフルーレが更にマントを引き破る。
えぇ?大抵の攻撃は跳ね返す妖マントなのにあっさりと;
ハニー | 「くっ…届かない…」 |
ジル | 「ハァー」 |
炎魔くん | 「あァ!? おれのマント…」 |
二度も足場代わりに蹴られた上、大事なマントまで破られて怒り心頭の炎魔くん。
異様な気配に空中のハニーも動揺する。
女相手でも容赦しない、ハニーに向かって火炎放射!
ハニー「きゃっ」
器用にも空中で体をひねって避けるハニー。炎はそのままジルの飛行船へ一直線。
ジル「ゲッ ひっ…」
飛行船が炎に包まれ落下して行く。
ハニー「あれ? ラッキ〜V」
…などと喜んでいる場合じゃないぞ、炎魔くんはマントを矢鎖に変えてハニー目掛け投げ飛ばす。
ハニー「うは!? やん」
落下しながらぎりぎりの体勢で炎魔くんの攻撃を避けたものの服が破られ、ビルに着地するハニー。
炎魔くんの攻撃は続く。火炎放射を避け、炎魔VSハニーの睨み合いが始まる。
タイトルの「VS」はこういう事。
その頃雪子姫とカパエルは割られた窓からビルの壁を伝って降下中。
雪子姫は氷の足場を作ってロッククライミング、カパエルは普通に壁歩き。
ハニー | (………) |
雪子姫 | 「?」 |
カパエル | 「あれ? なんか落ちたっスね」 |
飛行船が落ちました。市街地でない事を祈ります。ジル様ー!ご無事ですかああ!?
カパエル「しかしあいかわらず下着つけてないんスねェ雪子姫」
思いっきり顔面に蹴りを食らうカパエル。
「べっ あ や ちょ」
連続蹴りを食らうカパエルの頭からシャポーが外れ、ひらひら風に舞う。
……ただの帽子状態なシャポーだけは不満です、せがわ先生!!
ハニー | (……パンサークロー……じゃないよね…このコ …空飛んでるけど …どう見ても男のコだし… …人間じゃないみたいだけど…) |
炎魔くん | (こいつ… とりあえず妖怪ってワケじゃなさそうだが… この感じ……”変な”気配の大元ってトコロは間違いねぇ) 「てめえ 人間じゃあねえよなぁ?」 |
ハニー | 「(…だってアンドロイドだもんV)そういうキミこそいったい何者?」 |
炎魔くん | 「地獄の番人 火炎の炎魔だ」 |
屋上に着地、シャポーを冠る。
炎魔くん | 「相手が”悪霊妖怪”の類なら半殺しってトコロだな… どうやら てめえはソレとは少し違うみてえだが まあ…とりあえずオレのマントを引き裂いてくれた 礼だけはしとかねえと………」 |
ハニー | 「やァだ こっわぁ〜いV」 |
炎魔くん | 「なあ!!」 |
ステッキを向けた瞬間、ハニーがチョーカーのスイッチを押して叫ぶ。
ハニー | 「ハニー!フラーシュ!!」 |
炎魔くん | 「!? くっ…」 |
ハニーの体から発せられる光に目が眩んだ一瞬で、ハニーの両手が炎魔くんの肩に。
炎魔くん「しまっ… た」
目の前でキューティーハニーの衣服が弾け飛び、如月ハニーへと姿が変わる。
隣のビルからようやく現場へ辿り着いた雪子姫達もその光景に驚きを隠さない。
飛び越す直前、炎魔くんの左頬に悪戯っぽくキスするハニー。
雪子姫 | 「あ゛」 |
炎魔くん | 「てっ…」 |
ハニー | 「ごめんね〜 マント 破っちゃって〜V」 |
バランスを崩して転ぶ炎魔くんに、空中で逆さになりながら可愛くお詫び。
炎魔くん「なっ」
起き上がって振り向いた時には、如月ハニーの姿で屋根から屋根へ飛び移って去って行った。
炎魔くん「………なんなんだありゃ? …脱いだ… いや 化けた?…ワケわかんねえ……」
後ろ後ろ!雪子姫が近付いて来てますよ!
炎魔くん | 「……… …へっ あんな化物(モン)までいるとはなぁ… ”人間界”ってなぁつくづくおもしれートコロだぜ!!」 |
頬にキスマークつけて格好つけてますよこの男。
無言で軽蔑の眼差しを送る雪子姫。
炎魔くん | 「え? なに? …なんだよ?」 |
雪子姫 | 「炎魔くん 顔まっ赤」 |
炎魔くん | 「え?いや いやいやいやいや カゼカゼカゼカゼ カゼだって!!」 |
雪子姫 | 「あ〜〜〜そーなんだー じゃ 冷やさないとね〜」 |
炎魔くん | 「………」 |
雪ちゃんスマイルですが眉毛上がってます。炎魔くんピーンチ!
ハニー「ちょっとカッコよかったなーさっきのコ こんな感じだっけ? こんど使ってみよっとV」
炎魔くんぽい衣装にチェンジ。胸はしっかり開いてます(笑)
その頃炎魔くんは雪子姫に凍らせられておりました。風邪、悪化するよ。
雪子姫 | 「フン」 |
炎魔くん | 「………」 |
カパエル | 「ケケケケ… ケケケケケケケケケケケ」 |
終わり。
ちなみに『ドロロンえん魔くん』と『キューティーハニー』は同時期に連載・放映しているので二人がどこかで鉢合わせする可能性もあるにはあった。
炎魔VS〜ドロロンえん魔くん外伝〜/完 |